洗剤やシャンプーなどの日用品はすでに成熟市場である。消費者心理をどのようにしてとらえ、高付加価値商品を開発していけばいいのか。花王の尾崎元規社長にその処方箋を聞いた。
おざき・もとき/花王社長 1972年慶應義塾大学工学部卒業後、花王に入社。パーソナルケア、サニタリー、花王販売、化粧品、ハウスホールド事業などを経て2002年6月に取締役。04年より現職。(撮影/宇佐見利明) |
――2004年に社長に就任して以来、「商品は機能だけでは売れない。情緒性が必要」と繰り返し社内に訴えてきましたね。
日用品は成熟しており、洗剤だったら汚れ落ちがよくて当たり前。機能だけでは消費者の心がつかめず、差別化が難しくなってきた。
一方、消費者も商品の購入の際に、「自分に合う」といったフィーリングを重視するようになった。商品には、機能はもちろん「こんなところがよさそう」という情緒が求められるようになっている。
――消費者心理に訴えるために、商品開発ではどのような工夫をしていますか。
消費者の行動を見ると同時に、今の時代がどのように動いているのかを見極めていくしかない。
たとえば、シャンプーの「エッセンシャル」。もともと30年の歴史を持つダメージケアのシャンプーだったが、思い切って06年にリニューアルした。「毛先15センチが変われば“カワイイ”はつくれる」と、訴求ポイントを変えることで、再び20代の女性の支持を獲得できた。
――一般に、ブランドのリニューアルは既存の消費者を逃すと同時に、新しい消費者を獲得できないリスクがありますが。
エッセンシャルのシェアは低下したとはいえ、それでも当時4%をキープ。激戦区のシャンプー市場では十分に健闘しており、その資産を生かさない手はない。技術には自信があったため、どのようにして消費者から“共感”を得られるかが課題だった。
商品開発の担当者は、購買ターゲットである20代女性のライフスタイルを徹底調査した。彼らが突き止めたのが、購買ターゲットは「カワイイ」ものが好き、髪のダメージをさほど気にしてはおらず、むしろ髪形そのものに関心を持っていることだった。
そこでブランド戦略を練り直し、リニューアルにこぎ着けた。現在のエッセンシャルは、再び、20代女性に支持されるブランドに生まれ変わり、シェアは7%(推定)になった。