死ぬ前3年間は贈与ではなく相続財産として計算される

 余命宣告を受けてからでもできる相続対策として、遺言書を作ることの他にもうひとつ、生前贈与があります。これは節税対策というよりも、「この資産は○○に」というようなトラブル対策として意味合いが強いものです

 たとえば、財産の中でも今スグ贈与できるものといえば、やはり預金です。亡くなる直前でも渡すことができます。
 この贈与には、通常の場合であれば、非課税枠が設けられており、1人あたり年間110万円以内であれば税金がかかりません。つまり、この非課税制度を利用した贈与は、早い段階から長期で実行するほどより効果的な生前対策が可能になります。
 例えば、子ども3人に年間110万円ずつ、20年間贈与したとすると、330万円×20年=6600万円。早く始めるほど大きい額になります。

しかし、亡くなる前3年以内に贈与した分は相続財産に加えなければならない決まりがあるため、余命半年などの宣告を受けてしまうと使えないことになります。

 ちなみに、これに該当する期間に贈与を受け、贈与税を支払っていた場合は、その贈与税額を相続税額から引くことができます。つまり、納めた贈与税は控除できるため、2重に税金を納めることはありません。

法定相続人以外は非課税枠が使える!

 この非課税枠の適用には、亡くなる前3年以内を除くという縛りがあるものの、実は抜け道があります。
 それは、非課税枠が無効になるのは法定相続人に対する贈与分のみと決められていることです。子どもに贈与した分は課税対象になりますが、孫や兄弟、親戚など、法定相続人以外への贈与は1人あたり年間110万円まで非課税のままなのです。
 養子縁組(第2回参照)と違って控除に人数制限はないので、子どもや孫、兄弟、親戚など何人でもOK。人数が多いほど遺産を分散できます。

 孫へ生前贈与した場合のメリットはそれだけではありません。
 財産が親から子へ、子から孫へと、代々相続されることを考えると、親から孫への贈与は一代飛び越えることになります。
 相続税の課税対象とされる回数が2回から1回に減るため、その分さらに節税効果は高くなるのです。

 余談ですが、先日、タイで資産家の日本人男性が代理出産で子どもを複数もうけたというニュースが注目を集めました。
 その子どもの数の多さには驚きますが、20人近い法定相続人がいれば、相続税は億単位で違ってくることは確かです。この男性が被相続人になったら骨肉の遺産争いは避けられないように思えますが…。

次回は、一戸建て住宅の遺産分割にまつわるトラブルを取り上げます。

(取材/文 佐藤祥子)


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