遺言のタイプは3つ
ひと言で遺言書といっても、大きく3つのタイプがあります。
作成する人や保管方法などの違いによって、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に分けられますので、作成する前に確認しておきましょう。
まず自筆証書遺言ですが、これは文字通り自分で書く遺言書です。
今回の著書『ストーリーでわかる!今までで一番やさしい相続の本 (得する節税と相続トラブル回避法)』の中で、余命半年と宣告された治郎さんが、残された時間の中で作成するのも自筆証書遺言です。妻と3人の子どもたちに向けて、最良と思える遺産分割、家族への最後のメッセージを遺言に残します。
好きなときに作成でき、自分で保管するので、一番手軽な方法です。
2つ目の公正証書遺言は、公証人立ち会いのもとで作成する遺言書です。最初に触れましたが、遺言内容を口述し、その内容を公証人が記述するため、身体の自由がきかなくなっても作ることができます。原本は公証役場でしっかり保管されるので、紛失や改ざんの心配がなく安心確実です。
3つ目は、秘密証書遺言です。これは遺言内容を秘密にしたいときに利用します。自筆で書いて封をし、公証人および証人2人以上に自分の意思で作成した遺言書であることを申し出て署名押印してもらいます。作成後は本人が保管します。
遺言書を作る際は、この3つの中から都合に合わせて選びます。
また、自筆遺言書は無料で作れますが、公正証書遺言と秘密証書遺言は作成手数料がかかります。
公正証書遺言の手数料は財産価額に応じて段階的に高くなり、5000万円までは2万9000円、1億円までは4万3000円です。出張をお願いした場合は、通常の1.5倍程度の手数料に加えて出張費や交通費も必要です。
無効になることも! 遺言作成時のポイントとは
ここで自筆証書遺言の書き方についても触れておきましょう。
遺言書の中でも一番手軽な自筆証書遺言は、思い立ったら今スグにでも作ることができます。
手軽さが魅力とはいえ、手落ちがあっては認められません。法的効力をもつ遺言書にするには、次に挙げる要件を満たす必要があります。
・相続分や遺産分割の指定など、全文を自筆で書く。パソコンはNG
・作成日付を必ず入れる
・本人が署名、押印する
・遺言書が2枚以上になれば、契印あるいは割印する
遺言の内容は、わかりやすく正確に記入することが重要です。曖昧な書き方では意味がありません。誰に何をどれだけ譲るのかを明確にすることで、争いの種もなくなります。
遺言書の書き方や文例集などは、著書『新版 相続はこうしてやりなさい』で詳しく解説していますので参考にしてください。
また、自筆証書遺言は、遺族が開封する前に家庭裁判所で「検認」を請求する必要があります。
この検認とは、その時点での遺言書の形状、内容、日付などを明らかにして、偽造・変造を防止するために行うものです。
勝手に内容を変更できなくなり、もし誰かが手を加えれば必ずバレます。仮に遺言書が紛失しても、内容は残っているので心配ありません。
検認の目的は、あくまでも遺言書の存在と内容を遺族に知らせることです。遺言が有効か無効かを判断するものではありませんので混同しないようにしましょう。