総合商社勤務を経て起業し、現在はさまざまな商品を世界各国から買い付ける“フリーランス商社マン”の小林邦宏さん。これまでに訪れた国はおよそ130カ国。現在も50カ国程度と取引し、1年の3分の2は海外で過ごすなど、多忙な日々を送っている。今回は、そんな小林さんが世界中を飛び回るなかで掴んだ儲けるヒントや、今注目している投資対象などを聞いた!(渡辺賢一、ダイヤモンド・ザイ編集部)

「ダイヤモンド・ザイ」2025年12月号の「あの人に聞きたい! おカネの本音!」を基に再編集。データはすべて雑誌掲載時のもの。

商社をわずか5年で退職し、父とともに起業へ
ビジネスと知的好奇心を満たす目的で世界を飛び回る!

――東京大学の工学部卒ですね。学生時代は航空工学を専攻されていたとか?

小林さん 高校時代は古文、漢文が好きな“ド文系”だったんですが、F1が大好きで。レーサーにはなれないけど、エンジニアなら目指せるだろうと猛勉強して東大に入ったんです。ただ、いざ入ってみると周囲はものすごく優秀で「逆立ちしてもかなわない」と思ってしまって。勉強もせず、ゴルフばっかりやってました(笑)。

――それで、結局エンジニアになる道は諦め、商社マンになるわけですね。

小林邦宏さん・プロフィールフリーランス商社マン 小林邦宏さん●東京大学工学部卒業後、住友商事株式会社に在籍。2005年に株式会社グリーンパックス設立。現在はプラスチック関係、農業関係(切り花、フルーツなど)、水産関係、化粧品オイルなどを世界各地から買い付ける“フリーランス商社マン”。大企業が手掛けないようなニッチなビジネスを得意とし、眠っているビジネスの種を探して日々世界を飛び回る。

小林さん はい。新卒で住友商事に入社しました。学生時代にアルバイトで台湾の女子プロゴルファーのキャディをしたことがあり、「世界中を飛び回りながら仕事ができるなんていいな」と思ったのがきっかけで、何となく商社マンを選んだ感じです。

――ところが、たった5年で退職。いったい何があったのでしょう?

小林さん 一言でいえば、アクが強過ぎて組織になじめなかったんです(笑)。こうして話していても、僕の押しの強さがわかるでしょう?

――たしかに(苦笑)。

小林さん 最初は情報産業部門という花形部署に配属され、情熱を持って仕事に取り組み、成果も上げていました。ところが、あまりに上司の言うことを聞かなかったため、そりが合わずに別の部署へ飛ばされてしまった。

 そのときあらためて「この会社にいても成功は望めないし、時間の無駄だ」と感じて、独立を決意しました。ちょうど定年間近の父も独立を考えていたことから、一緒に会社を立ち上げることにしたのです。

――商社マンといえば高収入で、将来も安泰なステイタスですよね。それをなげうって独立するのは、不安じゃなかったですか?

小林さん 不安は全然ありませんでした。むしろ独立して経営者になったほうが、収入は増えるだろうと思っていました。住友商事で他部署に飛ばされたときは、やることがなくて、ゴルフばっかりしていたんです。

 そのときご一緒した経営者の方々を見て「商社マンよりもおカネを持っている人が多いな」と感じました。サラリーマンと違って収入を自分で決められるし、税制面でも有利ですからね。「だったら自分も」と思い、経営者の道を選びました。

――現在は、どんなお仕事をされているのですか?

小林さん 世界各地を飛び回り、現地で仕入れた商品を日本に輸入し、オンライン販売するのが主な仕事です。立ち上げ当初はスーパーのレジ袋を輸入していましたが、環境問題の影響で需要が落ち込むのは見えていたので、少しずつ縮小し、水産品や女性向けの化粧品、花などにシフトしました。現在はプラスチック包装材、水産品、花がそれぞれ3分の1ずつという構成です。

――世界各国を訪れていますね。

小林さん これまでに行った国は130カ国。米国や欧州などの先進国はもちろん、東南アジア、南米、アフリカなどの途上国もくまなく回っています。1年の半分以上は海外にいます。

――なぜ、それほど多くの国を回っているのですか?

小林さん 新しい商材を探すのが目的ですが、それ以上に「知的好奇心を満たしたい」というのがモチベーションです。旅好きの人ならわかると思いますが、知らない国を訪ねるのは、とてもワクワクするものです。130カ国回っても、まだ行っていない国はたくさんある。「次はこの国に行ってみたい」という興味は尽きません。