孫への教育資金の贈与非課税は
「素晴らしい仕組み」になり得る
みなさんは、祖父母から通学用かばんをプレゼントされた経験をお持ちだろうか?
通学用かばんの消費総額の4%は、60歳以上の祖父母が孫のために購入したものだ。だから、25人に1人くらいは祖父母から買ってもらっている計算になる。孫のために高齢者が使っている金額は、孫のためと特定しやすい内容に絞って計算してみると、年間約1.6兆円にも及ぶと推定される。
主な対象は、給食費、子ども服・制服、教育費、学用品である。玩具は厳密に区分して計算できなかったので外したが、実際はそれを加えて1.6兆円以上になろう。高齢世帯のうち、高所得・高貯蓄、そして勤労を続けている世帯ほど、孫のための消費に熱心である。
こうした孫への利他的消費をどんどん増やすように支援すれば、きっと景気刺激効果も大きいはず、と考えるのは筆者だけではあるまい。2013年の税制改正大綱では、孫への教育資金の贈与を非課税にするアイディアが盛り込まれた。年初1月に、このニュースを聞いたとき、筆者は素晴らしい仕組みができそうだと興奮したのを覚えている。
おおまかな仕組みは、直系尊属(子と孫)への教育資金の一括贈与について、1人当たり1500万円の非課税枠を設ける。1人の祖父母に3人の孫が居れば、一括贈与で4500万円の教育資金贈与信託に資金を移し、その金額には相続税・贈与税がかからない。親は、孫のための教育資金を受け取って、教育費負担を大きく増やせる。
この税制は、相続税の基礎控除額が4割縮小されたとしても、贈与の非課税枠を拡大させることを通じて、高齢者の相続税対策に道を拓く。同時に、孫の教育費援助、イコール子どもの教育資金の肩代わりにもなっていて、その効果は絶大だ。
少子化の背景には、親の経済力が乏しくなることで、若い夫婦が子供を持とうとしないことがある。わが国の若者たちの能力形成は、企業が若者たちに社内教育投資を手控え、新卒採用を抑制してきたことで、かつてよりも著しく低下しているようにも思う。