曽呂利は意図的にこの行為を行っていたのだろう。一方で官兵衛さんはそんな腹黒いことを考える人ではなかったが、周囲が疑うのも無理はない。こうして経営者に対してもっとも影響力のある官兵衛さんには、誰も逆らうことができなくなってしまったのである。

 そうこうしているうちに、官平衛さんが数々のプロジェクトを外しまくった結果、この会社は傾き、経営者も交代することになった。同時に官兵衛さんも干されてしまい、別の会社に転職せざるを得なくなったのである。

 この病の諸悪の根源は、官兵衛さんというより経営者にある。上司に求められた部下が「期待に応えたい」と感じるのは当然。そのため、経営者は右腕のことをオールマイティだなどとは思わず、得意分野を見定めて、その限りにおいて頼りにするべきなのである。

 急成長企業には、しっかりとした文書を書いたり、わかりやすく話してくれる人は少ない。だから、そういう人が現れるとあたかも超人的な才能をもっていると誤解しやすい。しかし現実にはそんな超人は存在しない。経営者は一人だけを頼りにせずに、分野ごとのブレーンを社内外から見つけ出さなければならないのだ。経営者に「サボり心」があるから、一人に全部任せてしまうような事態がおきる。

 もうひとつ、重篤な状況になる前に会社を救うことができるとしたら、官兵衛さん自身が“分をわきまえる”ということである。求められ、必要な勉強をするのは構わない。どんどんすればいい。しかし、「これは自分の得意分野ではありませんよ」「プロじゃないので、現場に聞かないと実際のところはわかりません」と、線引きをしていく必要はある。難しいことだが、自分の能力の限界を上に伝える勇気が、会社を救うのだ。