マッキンゼーに落ちたら、ゴールドマン・サックスに行く!?
私は本業としては新卒のキャリア相談はしていませんが、意識の高い学生の方を応援するため、時々、相談に応じる機会を持っています。先日お会いした学生の竹中さん(仮名)は、都内名門私立大の4年生。いろいろな人気企業でインターンシップに参加し、海外留学の経験もある非常に優秀な方でした。就職活動の様子を聞くと、「いま、戦略コンサルのX社で内定をもらっています。それと、投資銀行G社の債券部門の営業で内定をもらっています」ということでした。
そこで、「将来は何をしたいと考えているのですか?」と尋ねると、「20代で経営のことをしっかり学んで、将来、起業したいんです」という明確な答えが返ってきました。しかも、起業も単なる憧れということではなく、ご実家が農家ということで日本の農業の未来について強い問題意識を持っており、その問題解決をする事業を立ち上げたいと真剣に考えているようでした。
「じゃあ、戦略コンサルのX社で内定もらえてよかったですね」と私が言うと、竹中さんは、次のように答えました。「実は、本当はトップブランドの戦略ファームM社へ行きたかったんですけど、面接で落ちてしまいました。それであれば、業界は違うんですけど、投資銀行のトップブランドG社に行ったほうがいいんじゃないかと悩んでいます。M社を再受験する際にも、X社よりG社のほうが受かりやすいんじゃないでしょうか」
ブランドに翻弄されてゴールを見失う
すでに読者の方はお気づきだと思いますが、竹中さんは本来設定しているゴールとは異なる軸で意思決定をしはじめています。投資銀行の営業で活躍すれば、普通のビジネスパーソンでは考えられないような年収を若いうちから得ることができます。また、その実績に基づいて、他の投資銀行からも引く手あまたとなるでしょう。それはそれでたいへん素晴らしい花形キャリアで、文句のつけようもありません。
しかし大事なのは、一般論として素晴らしいキャリアをつくることではなく、自分自身にとって意味があるキャリアをつくることです。いくら人から「G社にお勤めなんですね。格好いいですね」と羨ましがられようと、自分にとって意味がないキャリアであれば、それはいいキャリアとは言えません。
投資銀行で債券の営業経験を積んでも、経営に関するスキルや経験を積むことはできません。その道を選び、結局、次のステップで戦略コンサルに入り直すことになったら、その時点で新卒時に戦略コンサルに入っていたよりも数年間も出遅れるというハンデを背負うことになります。