円安で株価が急騰するなかで、やや出遅れ気味の大型企業株がある。その代表が日本航空(JAL)と東海旅客鉄道(JR東海)である。日経平均株価は8月初めの安値から、9月25日までの間で、10.8%上昇したのに対して、JALはこの間8.2%、JR東海は7.5%と市場全体の値上がりに追い付いていない。その大きな理由の一つは、外国人投資家に嫌われているからだという。

JAL=優遇措置がなくなれば利益が減る

 まずJAL。JALの場合、円安が燃油費の上昇などを通じて、業績にマイナスに働くという事情がある。一方、この7月にはANAとともに、これまで下がり続けていた国内線の運賃を値上げした。これによって国内線の収支は改善の方向にあるという。国際線もインバウンド(外→内)の観光客、ビジネスの顧客は順調だ。にもかかわらず、株価が出遅れ気味なのは、外国人投資家がJAL再建に伴うさまざまな優遇措置が終了すれば、利益水準が落ちると見ているためだ。

 JALは2010年1月の会社更生法の適用に伴い、一気に過去のウミを出した。その中の一つが、財産の評価替え。機材などの資産価値を時価まで引き下げることによって損失が出るが、翌期以降は減価償却費などの費用が軽くなる。今14年度においても、減価償却費で約200億円の軽減効果があり、その分、営業利益がかさ上げされる。

 もう一つが、税法上の繰越欠損金(≒赤字)。税法上ある期に大幅な赤字になると、その後9年間にわたり、利益が出ても赤字(繰越欠損金)と相殺できて課税所得が減るため、法人税が減額されるか、納めなくてすむ。JALは経営破たんで10年3月期に約9000億円もの欠損金を計上し、これが繰越欠損金となっている。実際、JALの経常利益と最終利益は、12年3月期が1976億円と1866億円、13年3月期が1858億円と1716億円、14年3月期が1576億円と1662億円、15年3月期の予想も1350億円と1150億円となっている。

 正常な決算の場合、最終利益は経常利益の5~6割であるのが普通だから、JALがいかに繰越欠損金の恩恵を受けているかが分かる。この優遇措置は18年度(19年3月期)まで適用される見込みだ。

 現在、世界の航空会社の中でもトップ級の収益性を誇るJALも、外国人投資家から見ると、こうした優遇措置が期限切れを迎えれば利益水準が落ち、収益性が低下するというわけだ。一方、メリルリンチ日本証券の土谷康仁リサーチアナリストは、外国人投資家は最終利益の減少でJALのROE(株主資本利益率)が低下することを懸念しているが、実は同社には潤沢なキャッシュがあり、自社株買いなどの余地を考えれば割安感がある、と見る。