「昇進うつ」の裏側にあった
冷めた家族関係

 医師の言葉が胸に迫った。結婚して20年近く。新婚のときから夫婦間に会話がなかった。昼間は接客などでよく話すので、夜は人と話すのが億劫だった。最初は笑顔で話しかけていた妻も、そのうちに黙るようになった。

 そんな家庭だから、子供もおとなしいく人となじめない性格だった。年末年始は夫婦それぞれの別の実家に帰省。家族旅行もしたことがない。とはいっても家族を愛してはいる。今さらどう表現していいかわからなかった。振り返れば、家にいるのが苦手で仕事に逃げていたような気がしていた。

 実は今回の病気のことも、妻には最低限のことしか話していない。そんななか、子供が家に引きこもるようになってしまった。妻は1日中家におり、夫と子供に食事を作り続けていたが、一緒に食事をすることはなかった。当たり前のようにそれぞれの部屋で食事をしていたのだ。

 この状況を打開するために、家族3人で話した。まずは3人で食事を摂るようにした。少しずつではあるが、回復の兆しが見え始めた。そして休職して半年後、職場に復帰した。とはいうものの、今後もうつ病とは長い付き合いになると覚悟を決めた。

 東京クリニックの笹沼医師は以下のように語る。

 「この方の場合、健康診断で思い切って打ち明けてくれたので解決の糸口が見つかりました。人間ドックや会社の健康診断は血液検査やレントゲンの数値だけを見るところではありませんので、健診前の事前のアンケートや口頭で、普段感じている不調を気軽に訴えてください。その不調の陰に他の病気が隠れていることもあります。

 どんな病気でも早期発見して早期治療が基本でそれは精神科も同様です。うつ病の原因が職場のストレスであると自分では感じていても、カウンセリングを重ねていくと、実際は家庭の問題にあることもあります。夫婦の関係、親子の関係、親の介護、そして自分の健康の不安。このようなことが原因でうつ病を発症することもあるので、よく話を聞いてくれる医師を探して心の健康管理をしていきましょう」

(J&Tプランニング 市川純子)