企業の不祥事、「社員のリーク」によって新たな展開へ
「CIAOちゅ〜る」で知られる、いなば食品の社内情報の“タダ漏れ”が止まらない。
今春入社予定だった新卒社員の9割が、社員寮として「ボロ家」をあてがわれるなど待遇の不満から内定辞退をした、という文春報道を皮切りに、同編集部への内部告発窓口「文春リークス」や、暴露系インフルエンサーとして知られる滝沢ガレソ氏のもとに、「現役社員」から続々とタレコミが寄せられているというのだ。
それらの一部は、順次公表されSNSで拡散されている。例えば、週刊文春がいなば食品の「女帝」と報じた稲葉優子会長に関しては、社員への嫌がらせをした時の音声や写真、さらには社員に掃除をさせるという自宅内を撮影した動画までが出回って、ちょっとした「祭り」になっている。
さて、こういうニュースを聞くと、企業の危機管理担当者は「我が社がこんなことになったらと想像するだけで恐ろしい」と暗い気持ちになるだろう。
無理もない。当初、いなば食品が批判されていたのは「新卒社員へのひどい扱い」というピンポイントな問題だった。しかし、現役社員たちが経営一族の横暴な振る舞いや、社内の「謎ルール」をメディアやインフルエンサーにリークしたことによって、「企業体質」へと問題が拡大してしまったのだ。
つまり、「社員のタレコミ」によって新しい燃料が続々と投下されていくことで、不祥事や不正がどうこうではなく、「反社会的企業」というイメージが定着して、全国民から叩かれるようになったのである。
その典型的なケースが、ビッグモーターだ。こちらも当初問題になったのは保険金の不正請求だったが、相次ぐ社員のタレコミで、ブラック企業体質や、前社長の息子の常軌を逸したパワハラへと注目がシフトして、主にそちらが叩かれるようになった。
つまり、令和の企業危機管理というのは、迅速に謝罪文を出すとか、社長の謝罪会見を開いてどうこうというレベルではなく、「社員のリーク」をどこまで抑えていくかということが、成否を分ける鍵となってきているのだ。