マンションの機械式立体駐車場は便利だが、事故と隣り合わせの危険をはらむ。国も対策に乗り出したが法規制は難しい。住民の費用負担も課題となって、当面は進みそうにない。

 2012年7月、岩手県花巻市のマンションにある機械式立体駐車場で、4歳の幼稚園児が乗用車を乗せる台座と壁の間に挟まれて亡くなった。場内に男児がいることに気付かなかった母親が、誤って台座を動かしてしまったからだ。

2012年に起きた大阪府茨木市の事故現場。3歳の男児が犠牲になった
Photo:毎日新聞社/アフロ

 同じ年の4月には大阪府茨木市のマンションでも3歳の男児が機械式立体駐車場で死亡した。母親が操作している最中に台座に飛び移り、隣の台座との間に挟まれたからだ。台座に入れないよう遮る柵は、設置されていなかった。

 狭いスペースでも効率的に乗用車を収容できる機械式立体駐車場は便利だが、事故が絶えない。公益社団法人立体駐車場工業会のまとめでは、07年6月から今年1月までの事故件数は207件。発生場所が特定できたうち、マンションの駐車場での事故が4割を占め最も多い。死亡事故は10件で、駐車場内に人がいると気付かず操作したケースが多い。とりわけ、両親による操作で子供が犠牲になる事故は痛ましい。

 国土交通省は今年3月、メーカーや設置者向けに「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」をまとめた。各メーカーはすでに、ガイドラインに準拠した製品を出荷しているが、既存のマンション駐車場は、対策がなかなか進んでいない。対策の費用を誰がどのように負担するかという問題があるからだ。

 分譲マンションでは通常、建物や駐車場の維持管理費、修繕費などを住民から管理費として徴収し、住民代表でつくる管理組合が管理する。不動産市場が盛り上がりを見せていた2000年代前半ごろ、駐車場利用料は“ダンピング競争”が起きていた。