経営 × オフィス

過疎が進む故郷で若者と高齢者を同時に活性化
美波町に真の地方創生策を示した若きIT実業家

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第112回】 2014年10月7日
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 徳島県美波町にサテライトオフィスが開設されて、2年半が経過した。現在、サテライトオフィスは3社に増え、検討中が数社あるという。また、町内で新たに生まれた会社も「あわえ」を含めて3社を数える。年内にもう1社の起業が予定されているという。

都会の若者たちも自分の価値を再認識
ソトとナカの交流で地元は元気になる

築108年の銭湯を地域交流の場に改装したら、この大賑わい

 これらの会社の社員として町に定住している人は、計17名にのぼる。その多くが20代から30代である。若者の姿が消え、ひっそりとしていた美波の町が大きく変わったという。町のお年寄りたちは若者がいるだけで生き生きとし、ちょっとした手助けにも大喜びした。頼りになる存在だと目を細めたのである。地元の人は「たった数名の移住で町が元気になった」と口々に言うようになった。

 そんな反応は、都会から移住した若者にとっても新鮮だったという。自分がほんの少し力を出すだけで、困っているお年寄りを助けることができる。東京ではなかなか感じられなかった自分の存在感や力、価値などを、小さな美波の町では実感することができたのである。課題の大きさがほど良く、自分たちの力で改善できるように思えたのである。

 こうして「ソトとナカが交流すれば、地域は元気になれる!」という実感が広がっていった。吉田さんは「地域活性化とは、規模ではなく、活気を最大化させることです」と語る。そして、「美波町を舞台に地域活性化のモデルサ―ビスを構築し、それを他の地域にもお裾分けして、日本全国を元気にしたい」と語るのだった。

 現在、日本中に消滅の恐れに直面する自治体が生まれている。地元に雇用の場が少なく、都会に流出する若者が後を絶たないためだ。地方の疲弊は、東京一極集中と表裏一体の関係にある。地方から流出した若者はそのまま東京などで一生を終えるケースが多く、Uターンと言っても定年後というのがほとんどだ。

 しかし、最近はやや異質なケースも生まれているという。全国各地を回り、地域活性化の情報発信を続けている合同会社「VentunicatioN」の小槻博文代表は、「地元をいったん離れ、東京などでスキルを身につけた働き盛り世代の中で、地元のために何かできないかと思い、Uターンする事例が増えています」と語る。志とビジネス力を持った人たちが地元に戻り、地域活性化のリーダーになっているという。そう語る小槻さんも吉田さんの取り組みに共鳴し、美波町通いを続けている。

 そして小槻代表は、安倍内閣が掲げる地方創生策に対し、「中央主導で上から進めるのではなく、各地域で頑張っている人たちを後方支援するようなものにするべきだと思います」と注文をつけるのだった。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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