第78回で報告したように、多国籍企業の国際的租税回避は、わが国企業をも巻き込みつつある。一方先日オーストラリアで開催されたG20で、国際的な租税回避対応策の報告書が合意された。今後各国は、これをもとに国内法令を整備するとともに、租税条約の改定などを行うことになる。
多国籍企業の租税回避を防止することは、税の公平性を確保するだけでなく、企業の競争条件の公平化を図る上でも極めて重要なので、国民はもっと関心を持つ必要がある。
租税回避防止プロジェクトが始動
9月16日、OECDからBEPS(Base Erosion and Profit Shifting「税源侵食と利益移転」)プロジェクト第1段の報告書が公表された。多国籍企業の租税回避への対応として、G20の全面的な支持の下で各国が集まって検討を続けてきたもので、オーストラリアで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議でオーソライズされた。
この中にはさまざまな勧告が行われており、国内法や租税条約の改正が求められるものについては、各国で順次検討が開始される。わが国でもすでに見直しが始まっている。
残された議題については、2015年中に議論し終え、最終的な報告書が公表されることになっている。
そもそも国際的租税回避とは何か
本欄でこれまでスターバックス、グーグル、アップルなどの租税回避の問題を取り上げてきた。租税回避というのは、違法な脱税でもない、合法的な節税でもない、法には反しないが、通常用いられないような法形式を選択し、税負担を減少させる取引である。
わが国の判例法では、法の趣旨・目的に反したタックス・スキームは、「権利の濫用」にあたり税務上否認されている(「りそな銀行事件」最高裁平成17年12月19日判決)。
わが国企業は、意図的な租税回避行動からは縁遠いというのが一般的な認識であったが、税引き後利益率を改善させろという株主からのプレシャーもあって、最近のわが国企業の行動は変わりつつある。