目的地に2時間遅れ
説明も謝罪もなし

 ウィリアム征服王が築いた古城や男子修道院、王妃が築かせた女子修道院など、カーンには他に見るべきものがたくさんあり、多少後ろ髪を引かれる思いがあったが、その日の午後にカーンを離れた。カーンから東に100キロ強ほど離れた、セーヌ川河口にあるこれまた古い町、ルーアンに行くためだ。

歴史は繰り返すのか<br />~22年ぶりのノルマンディー再訪記フランスのローカル線

 今度も鉄道を使ったのだが、ここでトラブルに巻き込まれた。カーンを発車した列車が動き出して5分も経つと、突然止まってしまった。日本のように停車の理由を告げる社内放送もない。車掌が説明に走るわけでもない。たまたま一番前の車両に乗り合わせていたものだから、運転手に理由を尋ねると機関車が故障したらしく、カーンの駅までまた戻るという。

 結局、バックで戻って機関車を取り換えて走り出し、ルーアンに着いたのは当初の予定を2時間も過ぎた頃。繰り返すが、その間、車内放送があるわけでもないし、乗り合わせた乗客も文句ひとつ言わず、黙って座っているだけだった。

 日本では考えられないことだ。

オランドはメルケルの部下だ

 実はカーンのホテルでも、トラブルがあった。しかし、説明も謝罪もないのは同じだった。そこに、日本やアメリカのサービスとは大きな差を感じた。顧客をもてなすホスピタリティが大きく欠けている。22年前と比べても明らかにサービスの劣化が起きていた。町中の商店に入っても、店員が不愛想で買い物が楽しくない。

 最終日、パリのホテルから空港までタクシーに乗ったところ、気がつくとメーターが倒れていない。倒すように運転手に言ったら、「わかるからいい。空港までは80ユーロと決まっている」と言う。そこで、「俺のガイドブックによると空港までは55ユーロとある」と言ってやったら、「じゃあ60でいい」と答え、実際その通り支払った。これが日本やアメリカだったらどうだろう。東京都内のホテルから羽田空港まで、まっ昼間、外国人相手に騙して金を取ろうとするタクシー運転手がいるなんて考えられない。でもどうやらフランスではそれがまかり通っているらしいのだ。これでは世界一の観光大国の名が泣くというものだ。

 フランス経済はいま調子がよろしくない。いや、EU全体が沈んでいる。唯一元気なのがドイツだ。現地の口さがない連中が言うには、フランスのオランドはドイツのメルケルの部下、つまりドイツの副首相なのだそうだ。フランス経済の状況を肌で感じて、そういう嫌味を言われても仕方がないのではないかと思えてしまった。

 第2次世界大戦が勃発すると、フランスはたった6週間でドイツの軍門に下った。政治家の堕落や民主主義国家の脆弱性が理由だったと『フランス敗れたり』でモーロワは分析している。今のフランス経済の凋落ぶり、それに呼応したサービスの劣化ぶりに接してみると、歴史は繰り返す、という言葉を思い浮かべずにはいられなかった。