20歳の春に私たちは出会った。慶應義塾大学法学部法律学科、峯村光郎教授の「法哲学ゼミナール」同期生としてである。以来、ほぼ、50年、岸井と私のつきあいは続いている。
法哲学ゼミの同期生
政治的スタンスは正反対
2006年に私たちは『政治原論』(毎日新聞社)という「激突対談!」を出した。その「はじめに」を私が書いたが、まず、それを引こう。
<「筑紫哲也のNews23」でだったと思うが、私が、「政治家にモラルを求めるのはゴキブリにモラルを求めるのに等しい」と発言したら、隣に座っていた岸井がガタガタっと椅子を動かした。
後で聞くと、そんなことを言う私と“仲間”と見られたら、政治記者として、これから取材ができなくなると思ったらしい。それで、少しでもと距離を置いたのだという。
慶應義塾大学法学部の峯村光郎ゼミの同期生だから、どうしても敬称略となってしまうが、現在の2人の政治的スタンスはかなり違う。かなりどころか、極端に違うと岸井は言いたいかもしれない。
岸井が編者となって学生時代に出したゼミの文集のそれぞれの拙文が本書の付録として巻末に収録してあるが、あのころは、むしろトロツキーに傾倒する岸井の方が過激だった。ただ、思想としての過激であり、行動としての過激であったわけではない。
ほぼ40年の時を経て、それは完全に逆転し、いまは私が“過激派”と言われている。岸井は、自分が保守派になったのではないと主張したいだろうが、たとえば小選挙区制という名の1人区制をめぐっても、2人の評価はまったく分かれている。私は大反対であり、岸井はそれを推進する側にいた。
その2人が“激突”したこの対談でも、場の空気が険しくなることがしばしばだった。その様子をそのまま生かして、毎日新聞出版局の向井徹さんが編集してくれたが、“激突”が“決裂”に至らなかったのは、やはり”40年の交友の蓄積”があったからだろう>