35万部を突破したベストセラー『統計学が最強の学問である』の続編、『統計学が最強の学問である[実践編]』の出版を記念し、著者・西内啓氏をホストに統計学をめぐるシリーズ対談の連載がスタートします。
最初のゲストとして、前統計学会会長の竹村彰通先生を迎え、数学と統計学の関係などについてお話をしていただきました。(構成:畑中隆)
「言葉の力」が統計学を後押しした
──昨年より、統計学ブームが続いています。「ビッグデータ」という言葉の登場と深い関係があると思いますが、その辺りの関連についてはどのようにお考えでしょうか。
竹村 統計学者の中にもさまざまな意見があって、「ビッグデータは一過性のものにすぎない」という見方もあります。ただ、現実問題としてウェブの世界ではビッグデータは一般的になりつつありますので、一過性とは言い難い面がありますね。そもそも、データ量が増えてきたのは昨年からの現象ではありませんから、急に「ビッグデータ」現象が起きたわけではないのです。
「言葉」の力なのでしょうか。ビッグデータという言葉が流行ったことで、統計学に対する学生の関心も急増しています。スマートフォンやウェブというのは今や「社会インフラ」ですから、世の中に大きな変化、うねりが起きているのは確かですね。
統計学の立場からいえば、その変化に対応しないといけないという気持ちもある半面、少し煽られている感もあって……。少なくとも、ビッグデータについて指摘されていることが全部正しいわけではない、と感じています。
西内 「これからは統計学の時代かな?」ということで、竹村先生の研究室のような専門的な環境で学びたいという学生も増えているんですね?
竹村 はい、増えていますね。とくにウェブ系のアルバイトをやっていて、すでにデータ解析をしている、という学生が多いですね。「純粋に統計学をやりたい」という動機よりも、ウェブサービスで使われている機械学習についての知識を深めたいので、そのために統計学を学びたい、といったほうが正確かもしれません。純粋な統計学なのか、それとも応用的な統計学なのかの違いはあっても、データ解析そのものに興味を持つ学生が増えてきている、ということは嬉しいですね。