「1on1ミーティング」を導入するとき、Yahoo! JAPANはどのような経営状況にあり、どのような問題意識があったのか。実は成長のスピードに文化醸成が追いつかない、つまりは「大企業病」の兆候が明らかだった。
そのタイミングで社長を含む執行役員のほとんどが交代する新体制が発足した。そこから経営トップの強力なメッセージが次々に発せられた。
そのメッセージは、どのように組織の中に落とし込まれていったのか。第3回は「爆速経営」に舵を切った初期段階を振り返る。

自由こそが
Yahoo! JAPANらしさ

「ヤフーで働く人にはどんな特徴があるんですか?」
 「特徴がないのがヤフーの特徴です」

 新体制になる数年前、実際に採用面接の場で交わされていた会話です。

 Yahoo! JAPANは多くの事業を抱えていて、多種多様な業界から人が集まっていました。

「新しい事業を始めたいんだけど誰に聞いたらいいかな?」
「あぁ、それなら〇〇さんがその業界の出身だから聞いてみたらいいよ」

 といった会話が毎日聞こえてくるほど社内で完結することが多かったのです。結果、人の数だけ特徴がある、独特の文化ができていました。

 冒頭の面接担当者が回答した背景には、単一の色で表すのはYahoo! JAPANらしくない、特徴は人それぞれ、自由こそがYahoo! JAPANらしさだ、という意図が込められていました。

右肩上がりの成長と
忍び寄る「大企業病」の影

 その後、急成長を遂げるとともに社員数は急激に膨れ上がり、成長のスピードに文化醸成が追いつかない状態になりました。Yahoo! JAPANに「大企業病」という名の病が襲いかかってきたのです。

 誰にでも使っていただけるポータル・サイトを目指してきた結果、「誰からも嫌われないけど強烈なファンもいない」という会社になり、個性や特徴が失われつつありました。

 会社としての業績は決して悪くなっていない。むしろ右肩上がり。それでも社内には危機感が広まっていく。このまま大企業病に侵されていくのか?個性的で優秀な社員は辞めていく、でも業績は良い。本当にこれでいいのか?

 社長を含む執行役員のほとんどが交代する新体制が発表されたのはこのような状態の最中でした。