夏祭りに700人が押しかける理由

 地域の方との交流を深めるため、ここ最近は1年おきに夏祭りを開催しています。これも当社なりのおもてなしの一つです。

 最初のうちは招待された人もおそるおそる会場を訪れたことでしょう。
 面と向かって言う人はいませんが、「何をやっているのかわからないけれど、招待されたからとりあえず行ってみよう」という不信感の入り交じった気持ちだったと思います。

 でも、いまではとても楽しみにしてもらっています。
 今年の夏は、花木園内に建立した神社・くぬぎの森鎮守神のお披露目も兼ねて「神々宿る夏の夜祭り」をテーマに地域の人たちへの感謝祭を開き、地域の方や協力会社の家族など、約700人が参加してくれました。

 開演前には、尚美学園大学の学生さんがウェルカムコンサートを演奏してくれました。お囃子・太鼓の披露、エコキャップ推進協会による表彰状授与式、フラダンスショー、ファイヤーショーなどのイベントを行い、参加者には屋台料理を楽しんでもらいました。

1300万円は「経費」でなく「投資」

 実は、夏祭りを開催するときにはいろいろな準備が必要です。
 スタッフで何回も会議を開き、安全管理や緊急対策などを徹底します。
 招待者には1500円の食事チケットをお渡しして、送迎バスも用意します。
 だから、夏祭りを開催するには約1300万円の費用がかかります。

 でも、地域の人たちが家族そろってきてくれたり、お年寄りがお孫さんを連れてきてくれたりするのを見ると、毎回やってよかったと思います。

 みんなでお酒を飲んで会話を楽しみ、最後に「ありがとう。楽しかったわ」と言われると、ようやく石坂産業の存在が認めてもらえたような気持ちになり、うれしくなるのです。

 本業である産廃業をどんなにがんばっても、どんなに一生懸命PRしても、なかなか結果は得られませんが、「あの会社は地域に必要だ」と思ってもらえる方法はいろいろあるということです。

 そう考えると、夏祭りの費用は、私たちにとって「経費」ではなく、永続企業になるための「投資」なのです。
(第4回につづく)

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。