全体を体系的に見渡す
~時間軸や視野を広げて考えること

 『ビジネスモデル全史』(2014年)(ディスカバー・トゥエンティワン)三谷宏治著 

『ビジネスモデル全史』三谷宏治著(ディスカバー・トゥエンティワン)

 三谷宏治さんは、KIT虎ノ門大学院でご一緒させていただいている方ですが、お話を伺っているといつも鋭い思考回路に感嘆します。しかし、その思考回路の裏側で人知れず、ものすごく緻密な汗をかかれていることはあまり知られていません。

 本書は、「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2014」や「ビジネス書大賞2014」に選ばれた本です。前作の『経営戦略全史』にハマった方は、必読でしょう。そして、はじめての方や、その厚さと値段に恐れをなした方(笑)も、ぜひ読んでいただきたい本です。

 アップルやFacebook、サービス会社に変貌したIBM、ダイレクトモデルのデル、垂直統合のフォード自動車など誰でも知っているサービスや製品が、どのようなビジネスモデルの変革により生まれてきたか、山谷のあるドラマのようにわかる楽しさがあります。

 序章にあるお金にまつわるビジネスモデルの革新では、私たちが当たり前に使えるようになったマネタリーサービスの変遷がドラマの展開を見るように分かります。お金を持ち運ばなくてすむように国際的な決済・為替ネットを構築したメディチ家、それを個人に広めたアメックスのトラベラーズチェック、さらにどこでも使えるようにしたVISAクレジットカード…と取引のモデル変革の変遷をみると、私たちの生活の便利さと多様性の源流がみえてきます。さらにその先(今)には、マイクロペイメントやモバイルペイメントがありますね。

 ビジネスモデル革新がどんな不便利を変えてきたのかを一望できる本書は、歴史を知る楽しみとともに、ものの見方考え方を広げるという点で、とても面白い感覚を味わうことができるでしょう。

 また「ビジネスモデルの革新が“持続的競争優位”につながるのは結果論であり、本質的には、競合に勝つためではなく、新しい市場や未来を創造するためにある」という考察などから、単に情報や知識を集めて編集しただけではない深みを感じさせてくれます。

 そして、「現代は何億の人が知的能力を持て余し、発散させたがっている知の余剰の時代」であり、ゲームやバラエティ番組などに浪費している時間の1割でも知的生産活動に振り向けたらすごいことになる…というメッセージにとても深い共感を覚えました。視野拡張の楽しさを感じたからです。