本店の売り場には納豆の他に本物のかつお節やスペインのEVオリーブオイル、松田のマヨネーズなどちょっとしたセレクトショップなみに厳選された商品が並んでいました

──そういえば、商品にタレがついていない製品も販売されていますよね。あれにはなにかこだわりが?

「うちは大部分の商品にタレはつけていません。タレだと画一化されて、毎日同じ味になるじゃないですか。微調整が利かないというか。醤油、みりん、オリーブオイル、などいろんな食べ方があるのが面白いんじゃないかな、と思っています。また言い方が非常に難しいんですが、発泡トレイは発酵容器でもあります。煮た大豆を詰めて、ビニールなどの皮膜をつけ、その上にタレと辛子を載せてパックします。それが保温材のような役割をしているんです。ということは(納豆菌を増やすため)タレや辛子は41度に23時間、必ず晒されます。そのためその温度に耐えられるような工夫が色々と必要になってきます。だから、我々ははじめからつけないか、あるいは後から添えるという形にしています」

 納豆菌が増える温度帯は食品が傷みやすい時間だ。聞くまで気がつかなかったが、タレがついていないのにはちゃんと理由があるのだ。

 細かな工程にも気を配ること、疎かにしないこと。小さな蓄積が味の違いを生む。結局のところ、食べものというのは素材と加工という二つの要素しかないのかもしれない。そこをどこまで突き詰められるか、だ。

──この仕事を続けるなかで一番大事なことってなんですか?

「やっぱり納豆が好きってことじゃないかな。好きこそものの上手なれじゃないけど、私なんかなんでも納豆の話になっちゃう。変な話だけどなにを考えていても納豆になっちゃうんですよ(笑)。例えば若いころ車が好きだったんですけど、友達とフェラーリについて話すとするじゃないですか。私なんかつい『俺は納豆業界のフェラーリになりたいね』と言っちゃうわけです。釣りの話をしていても『納豆でいえばね……』ということになっちゃう(笑)」

生産者の梶さん。「大豆の自給率って低いじゃないですか。僕たち結構な量つくっているんですけどね(笑)」。大豆の自給率が低いのはカロリーベースで計算されるため、油脂用に使われる輸入の割合がどうしても高くなるからだ。油目的の外国産と食べるためにつくられた国産では美味しいのは当然、後者だ

 取材の日はたまたま北海道から大豆の生産者であるK’sFARMの梶宗徳さんが訪れていた。梶さんは北海道十勝で、ジャガイモやビート、大豆や小麦などを生産している。梶さんは柔和な笑顔を浮かべながら「青大豆は背丈が高くて収穫が面倒だから、生産量が少ないんですよ」と教えてくれた。

──工場を見られてどうですか?

「実際に使われている現場を見ると、やっぱり嬉しいです。うちでつくったのがこんな風になっていくのかな、と」

「こういう現場同士の繋がりみたいのが今はなくなってきちゃっているのかな」と南都社長が言う。

「人と人との繋がりが一番大事ですよ。みんな志持ってやっているから、日本の食の未来は暗くないと思います」

【動画】下仁田納豆「経木納豆」

(写真・映像/志賀元清)