超優良企業にもいる?
仕事ができるタダ乗り社員とは

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む心のダークサイドがいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 数年前、拙著『フリーライダー~あなたのとなりのただ乗り社員~』の取材のために、某企業の人事部長にお話をうかがったときのことだ。

 その企業は、日本人ならば知らない人はいないだろう、「超」のつく有名企業で、学生の就職希望ランキングでも常に上位に入っている。当然ながら、入ってくる社員は激戦を勝ち抜いた優秀な人材が多い。

「そんな優良会社にも、タダ乗り社員はいるのか」という筆者の問いに、人事部長が皮肉な笑みを浮かべながらこう答えたのが印象的だった。

「タダ乗り社員? いっぱいいるよ、ウチだって」

 話を聞くと、その会社でのタダ乗り社員は、仕事をサボる、手抜きをする、という類のものではなかった。皆優秀なので一応仕事はできるのだ。

 では、彼らはなぜフリーライダーになるのか。

 あるプロジェクトを担当することになったA氏は、入社4年目のB氏をメンバーに入れた。そのプロジェクトは、海外の複数の国からいくつかの材料を仕入れ、日本で加工することで付加価値のある商品を生み出すものだったため、語学に堪能かつ海外暮らしの経験もあるB氏ならば、適任だと判断したからだ。

 B氏も大きなプロジェクトの中心メンバーに加えてもらったため、最初は張り切っていた。このB氏、幼少の頃から両親の仕事の都合で、世界数ヵ国で暮らした経験があり、語学も英語をはじめ、4ヵ国語が話せる。さらに日本の一流大学を出ており、頭のよさも経験も十分だと思われた。