村山談話から後退すれば
世界から孤立する可能性も

 安倍首相は1月5日の年頭記者会見で、「村山談話」を継承するのかという質問に対して、以下のように答えている。

「従来から申し上げておりますように、安倍内閣としては、村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいます。そしてまた、引き継いでまいります。(中略)戦後70年の節目を迎えるに当たりまして、安倍政権として、先の大戦への反省、そして戦後の平和国家としての歩み、そして今後、日本としてアジア太平洋地域や世界のために、さらにどのような貢献を果たしていくのか。世界に発信できるようなものを、英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考えであります。」(首相官邸ホームページ「平成27年1月5日安倍内閣総理大臣年頭記者会見」より)

 だが、「安倍首相は中国では典型的な右派政治家として見られており、歴史認識問題については警戒感が強い」(吉田陽介・日中関係研究所研究員)。

 2013年末、日中関係の緊張が高まるなかで、安倍首相は靖国神社を参拝した。また、2014年7月には集団的自衛権行使容認などを進め、今年はそれに関する法制度を整備することを掲げている。安倍政権発足後の動きから見れば、警戒されるのも無理はないだろう。

 日中両国で日中関係をウォッチする外交や近現代史の専門家たちは、「村山談話から後退するような文言は書き込まれないだろう」と予測する。

 だが、もし仮に村山談話から後退する文言が書き込まれた場合は、米国も含めた外交問題に発展すると、多くの専門家が口を揃える。

 たとえば、宮本雄二・駐中国特命全権大使は「中国との関係のみならず、アメリカとの関係も壊れるだろう」(本サイト『日中で分かれる合意文書の評価 未だ脆弱な日中関係に残された“宿題”』2014年11月12日)という。

 さらに、前出の日本在住の中国人近現代史研究者は「中国や韓国などのアジア諸国だけでなく、アメリカを含めた欧米各国も日本を『国際常識のない、歴史を直視しない国家』と見るようになり、完全に孤立する」と見る。

 11月のAPECでの日中首脳会談から、ようやく好転の兆しを見せ始めた安倍政権の東アジア外交。政治だけではなく、経済界や民間交流に関わる多くの日本国民が待ち望んだものだった。その良い雰囲気をさらに良くするのか、もしくは最悪の状況に変えるのか。今年出される安倍談話は、今後の日本にとって、とてつもなく大きな影響を与えそうだ。