公務員講座など資格試験の専門家にして弁護士の豊泉裕隆が、公務員への就職・転職を目指す人のために、役立つ情報を提供する連載。今回は、難関司法試験を経て弁護士になった人が、公務員になっているというお話。
みなさんこんにちは、弁護士の豊泉裕隆です。
今回はちょっと趣向を変えて、弁護士の任期付公務員についてお話したいと思います。「え?公務員のおいしさってあれだけなの?」って思った皆様、ご心配なく!「公務員のおいしさ」については、次回以降引き続きお話しますので、そちらを楽しみにしていてください。今回は単発コラムのようなものです。
では本題に入っていきます。
公務員と弁護士って、何だかとてもかけ離れた職業のように見えますよね? 公務員は安定志向、弁護士は独立志向、そんなイメージを持っている人が多いのではないかと思います。しかし最近、公務員と弁護士のコラボが始まっているんです!
それが、弁護士の任期付公務員というものです。
弁護士の任期付公務員は、県や市などが、2年とか3年といった任期を決めて、弁護士を職員として採用する制度です。仕事内容としては、住民からの法律相談や職員に対する法務指導が中心のようです。そのほか、訴訟や行政不服申立てにおいて県や市の代理人となったり、コンプライアンスのための施策立案などがあるそうです。今や企業だけでなく、県や市などの自治体もコンプライアンス(法令遵守)重視なんですね。
さて、この弁護士の任期付公務員、県や市にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?
弁護士といえば何と言っても法律の専門家です。その弁護士に職員として常駐してもらえば、県や市としては、法律問題に迅速かつ正確に対処することができます。内部の職員が一つ一つ調べながら対処するより、最初から専門家に頼んでしまった方が早いっていうことですね。
しかも、公務員としての給料を払うだけでいいわけですから、その都度弁護士に依頼するより安くすむことになります。う~ん、さすがお役所、とても合理的な考えです。
では反対に、この弁護士の任期付公務員、弁護士にとってはどんなメリットがあるのでしょうか? せっかく大変な思いをして司法試験まで受かって、何で公務員なの? それなら最初から公務員試験受けておけばいいのに。
そんな声が聞こえてきそうですね。しかし、弁護士の任期付公務員には、弁護士側のメリットも大きいのです。
一つは、県や市などが関与する大きい事件を担当することができるという点です。県や市などが関与する事件には、テレビや新聞などでニュースになるような大事件もあります。 そんな大事件に自分が関われるというのは、弁護士としてはさぞかしやりがいがあることでしょう!
もう一つ切実なメリットがあります。それは……実は……弁護士って今……就職難なのです(泣)
従来、弁護士登録は、司法修習が終わってすぐに一斉になされていました。しかし、平成25年12月19日の一斉登録時(第66期)において、司法修習を終えた人のうち弁護士未登録者は、何と570人もいました。司法修習を終えて裁判官や検察官になる人もいますが、この数字は裁判官や検察官になった人を除いています。
つまり、570人というのは、純粋に一斉登録時に進路が決まっていない人の数字なのです。司法試験の合格者、急に増やし過ぎましたよね…。
そんなわけで、弁護士の任期付公務員は、弁護士の就職先を増やすという大きなメリットがあります。このように、弁護士の任期付公務員は、県や市にとっても弁護士にとってもメリットがある素敵な制度なのです。いわゆるウィンウィンの関係ってやつですね。
次回は再び「公務員はこんなにおいしい」というテーマでお話をさせていただきます。アップは1月26日(月)の予定です。 それではみなさん、次回も是非ご覧ください。