企業戦略の主戦場が
人事・組織の分野に移ってきた

 ラム・チャラン教授は、戦略人事を実現する上で2つの問題があると指摘しています。

 1つは、人事部員の能力・経験の問題で、もう1つは、人事部の組織構造の問題です。

 まず、1つ目の人事部員の資質・経験に関して考えてみたいと思います。

 人事部が戦略的になるには、ビジネスや経営戦略を理解しなければならず、そのためには、CHROは、ビジネスの現場を経験した人を配置すべきだとしています。

 ビジネスの現場経験が人事部員に必須かどうかは分かりませんが、ビジネスの言語(戦略、マーケティング、財務など)を理解した人がCHROの役割を果たすべき、というのは納得感があります。

 しかし、この記事が物議を醸しているのは、もう1つの組織構造の面からの指摘が理由です。

 その主張は明快で、給与や福利厚生などのアドミが中心の人事機能を人事部から切り離して、CFO(財務部)レポートとし、人事部は、リーダーシップや組織などビジネスに大きなインパクトを与えられる分野に集中すべきだという指摘です。

 このラム・チャラン教授の主張に対して、デイビッド・ウルリッチ教授は、「どうやったら、人事部がビジネスへの付加価値を上げられるのか」という大きな課題を、組織構造を変化させることとで解決しようとするのは、あまりにも単純化しすぎではないかと、同じハーバード・ビジネスレビューで批判しています。

 経営戦略の分野でマイケル・ポーター教授やヘンリー・ミンツバーグ教授らが激しく議論を戦わせたことはありましたが、人事・組織戦略の分野でこのような現象が起きるのは異例のことです。

 言い換えると、経営戦略の優劣で他社との差別化、つまり良い企業業績を実現することが難しくなったアメリカでは、主戦場が人事・組織の分野に移っていると言えます。