相手を不快な気分にも、良い気分にもさせるニオイ。実はニオイは、見た目以上に人間の脳で感知する速度が速いとも言われ、人の第一印象を左右する重要な要素だ。しかし逆にとらえれば、ニオイによって相手からの印象を意図的に変えることができる可能性もある。一体、どのようなニオイや香りならば、相手から好印象を得られるのか。ニオイと心理学の関係を研究している東北大学大学院文学研究科心理学研究室の坂井信之准教授にニオイを味方につける方法について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
東北大学大学院文学研究科 心理学研究室 准教授。1969年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、科学技術振興事業団科学技術特別研究員、神戸松蔭女子学院大学人間科学部准教授を経て、2011年10月より現職。現在の専門は「応用心理学」で、主にニオイに関連する商品を中心に、人間が商品のどんなところに注目し、購入を決定するか、また、どのようにしてその商品を使い、評価するか、さらにはその商品に対する印象をどのように形成し、次の商品購入の基礎とするかということを心理学/脳科学的に研究している。
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実は見た目より大事!?
ニオイが第一印象に重要なワケ
――ニオイは人間の脳(感情や行動)にどう作用するのでしょうか?
まだ明らかになっていないことも多く、はっきり言えない部分もありますが、今の時点でわかっているのは、脳におけるニオイの感知は他の感覚と全く違うということです。
視覚情報や聴覚情報は、脳で処理する際に神経細胞同士をつなぐシナプスを10個ほど介した時点で光や音として処理できるレベルになります。ただし、その段階でもきちんと認識はできない状態です。一方、ニオイ(嗅覚情報)は鼻で処理をされた情報がシナプスを通じて脳内に運ばれていきますが、どうやらシナプスを2つ介した時点で意味付け、つまり『これは敵のニオイだ』『餌のニオイだ』と急に意味を持つようになるようなのです。これらは動物実験でわかった結果ですが、ニオイはすぐ感情と行動に反映されると言えますから、第一印象に影響を与える可能性があると言っていいでしょう。
もちろん人は他の動物と異なるので、どこまで相手の印象をニオイだけで判断するかはわかりません。ただ、もし『臭くて見た目も不潔そう』なら完全にそちらに偏るでしょうし、同じ見た目で臭い場合とそうでない場合は臭かった場合の方が印象は悪くなるのは間違いありません。
なぜ自分のニオイは気にならない?
決して「臭くない」からではなかった
――他人のニオイは気になるのに、自分が発するニオイは気にならない・気がつかないことがあります。それは一体なぜでしょうか?