原油価格の先行きは、日本経済にとっても企業経営にとっても、極めて影響の大きい重要事である。このまま低価格が続くとの見方もあるが、年後半には、上昇に向かうことになりそうだ。ただし、上ブレ、下ブレをもたらすリスク要因が多数あり、“決め打ち”は危険だ。上下双方向のリスクを想定し、備えておく必要がある。
底打ちした原油価格
ただし生産調整はまだこれから
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昨年夏以降続いている原油価格の急落は、年初に付けた40ドル台前半でとりあえず底を打った感がある。だが、上昇に向かうのは年央以降となるだろう。
原油価格反転は、産油国の生産調整が進む、との期待感が高まったためだ。「材料」として注目されたのが、油田サービス大手、米ベイカー・ヒューズ社のリグカウント(稼働油井数)の減少である。しかしこれは、新しく原油の井戸を掘るあるいは水平掘削を行うための掘削装置の稼働数が減少したということであり、原油の減産を意味するものではない。リグカウントの減少からいえるのは、「将来の増産ペースが鈍化した」ということだけである。
米エネルギー省の推計では、油田掘削から生産開始まで4ヵ月程度の時間差があるとされている。そのため掘削作業が減速しても、掘削が完了しているが生産をしていない油田の「在庫」がまだあり、実際に減産に結び付く中小生産者の破綻や高コストな油田の生産停止が起きるのは、先のことになる。
また、先物やプットオプションを活用して、80~90ドルよりも価格が下がったときのリスクを回避している企業も多数あると想定されるため、生産調整が実感できるようになるには、まだ時間が掛かると考えられる。
原油価格は、年央から年末に向けて上昇することになるだろう。ただし、大幅な価格上昇は想定できず、2015年末でブレント原油は1バレル68ドル、WTI原油は65ドル程度を目指すと予想している。
また、大きな振れを伴いながらの上昇になると考えている。上下双方のリスクに備えが必要だ。