原油価格の急落が続いている。国際的な指標である北海ブレント原油は本稿執筆の3日時点で1バレル当たり70ドルを割り込み、4年ぶりの安値に落ち込んでいる。今年6月と比べると、下落幅は38%となった。
特に、石油輸出国機構(OPEC)が11月末の総会で、減産を見送ったことが原油安を加速させた。ベネズエラなどOPEC加盟国の一部はさらなる値崩れを防ぐため、減産を主張していたが、最大産油国であるサウジアラビアが静観の構えを崩さなかったのだ。
だが、なぜ、サウジは減産を拒むことにしたのか。背景には「“シェールつぶし”の狙いがある」(石油業界関係者)との見方で関係者は一致している。
シェールとは、特に北米で生産が急速に増えている非在来型の石油やガスのことだ。地中深くから石油・ガスを取り出す技術の向上により、米国の平均原油生産量は今年日量864万バレルに達し、4年前から40%近く増加した。
国際エネルギー機関(IEA)によると、米国などOPEC非加盟国の生産シェアは2020年に60%にまで上昇するという。一方、OPEC加盟国の支配力は徐々に低下する傾向にある。
そこで、サウジは「原油価格を低下させておくことで、シェール開発に打撃を与える狙い」(同)とみられているのだ。サウジは、外貨準備が潤沢で、一橋大学の橘川武郎教授によると、「現地の国営企業に聞いたところ、実際は国家予算も1バレル60ドル台でも黒字を維持できるようだ」という。
とはいえ、国際通貨基金(IMF)によると、OPEC加盟国でも、オマーンが財政を黒字化するには1バレル102ドルが必要。イラン、イラクも同様に、価格低下に悲鳴を上げ始めている。
つまり、今回の原油安で露呈したのは、世界の原油供給の約3分の1を担い、原油価格の高値維持で協調してきたOPECが、その価格調整機能を果たせなくなりつつあるという実情である。