94年から海外と直接取引する機会を増やし、技術サポート、開発体制を整備し始めました。96年に社長になり、98年には売上が海外70%、日本30%ぐらいと逆転しましたね。そういう意味では、お客さまの動向ひとつですけど、グローバル企業として成長する姿勢を一貫してきました。90年代は欧米中心のグローバルでしたが、2000年以降はアジアにシフトしていきました。そのなかで本当のグローバル企業がなんなのかを意識することになりました。これが一つの大きな流れですね。

松江英夫(まつえ・ひでお)
デロイト トーマツ コンサルティング パートナー Strategy&Operationsリーダー。中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授。「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。
本連載をベースにした書籍をダイヤモンド社より発売予定。

 もうひとつ、当初東京エレクトロンは世界の技術を日本に導入するディストリビューターとして、技術サポート中心の企業でした。その後、日本の半導体が成長していくなかでジョイントベンチャーをつくり開発・製造を行うメーカーに変化していき、そしてメーカーからさらに開発のグローバリゼーションを中心に置く企業へと展開しました。これも重要なポイントで、今後もこうした変化を続けなければいけないと思っています。

 その意味では業界の特徴がよく出ています。たとえば日本のエレクトロニクス、半導体産業を見ても、この10年、20年で衰退しています。日本企業は常に追いかけていくフォロワー的なイメージですね。最近は、日本の半導体メーカーにおいてはフラッシュメモリやCMOSセンサーなどで特徴を出す動きが出てきていますが、以前はみんなが横並びでDRAMをやっていました。韓国、中国、台湾が伸びるなかで、日本はどう特徴を出していくんだと。

 マーケットの見方が世界に広がっていないのがひとつの大きな要因だと思います。厳しい環境の中でやっていくなら世界一の技術でないと駄目なんですよ。他社を引き離す技術で世界をリードする意識が常に働かないと、こういう世の中では厳しい…。

松江 そんな激しい業界の中で持続的に成長するために、今までどのような方針で会社運営をされて来られたのでしょうか?

 就任時に基本方針を出しました。お客さまの将来動向をしっかりと見て、いかにお客さまの満足を得るか、いわゆる「カスタマーファースト」を事業の中心に据えていくことがひとつ。

 そして技術で常に世界一を狙うこと。それは日本がマーケットであっても、世界一の技術でなければ駄目だということですね。

 このふたつを支える意味で、当時は「起業家精神」という言葉を使って、会社のトップから社員まで全員が若い精神、若いエネルギーを持たないと駄目だと伝えました。この業界だからこそ、会社全体として変化をいとわない、あるいは自ら変化することを良しとする文化がないと停滞気味になってしまう。ですから、そういう企業文化をトップ、社員全員が共有することを常に心がけることが特に重要ですね。