都道府県の選挙と市区の選挙では選挙区域面積や有権者総数が違うので、枚数の上限設定に差が生じるのは当然と考える方が多いかもしれない。しかし、そうした違いは選挙ポスターの掲示板数にしっかり反映されているので、公費負担の上限枚数に差をつける根拠にはなりえない。さらに首長選はまだしも議員選となると、選挙期間もわずか2日間しか違わない。

 それになによりも公費負担の選挙ポスターはポスター掲示板と選挙カーにしか貼れないことになっている。

 具体的な事例で考察してみよう。2013年6月に都議会議員選挙が実施された。都議会の議員定数は127人で、42の選挙区にわかれている。このうち23の特別区と12の市はそれぞれで単独の選挙区となっていて、都議と区市議の選挙区がぴったり重なり合っている。ところが、選挙ポスターの公費負担限度額には大きな差が生れている。

 杉並区の例をみてみよう。都議選の杉並区選挙区の場合、選挙ポスター1枚当たり限度単価1065円に掲示場数524の2倍の数値1048を掛けるので、公費負担限度額は111万6120円となる。一方、4月に行われる杉並区議選では限度単価に掲示板数を掛けるだけなので、公費負担の限度額は半額の55万8060円となる。

 2013年の都議選で杉並区選挙区から10人が立候補し、全員がポスターの公費負担を請求した。請求総枚数は8992枚と上限枚数の約86%に達し、公費負担の合計額は859万7994円となった。都全体では253人が立候補し、240人が選挙ポスター代の公費負担額を請求した。その総額はなんと1億5410万円余りにも上った。

 なぜ、同じエリアの選挙で公費負担のポスター枚数の上限に2倍もの開きがあるのか。東京都選挙管理委員会にその理由を尋ねてみたが、どうにもはっきりしなかった。要するに都は「国の基準に基づいて条例を作った」というだけのようだった。掲示板数の2倍というのは、貼り直したり、デザインを替えたりするためだとも言っていたが、都議選の選挙期間はわずか9日間である。7日間の区市議選とそう大差ない。繰り返しになるが、公費負担の選挙ポスターはポスター掲示板と選挙カーにしか貼れないことになっている。

 とすると、そもそも国の基準自体が過剰過大なものとしか考えられないのである。まるで候補者に水増し請求してくださいと誘っているようなものではないか。選挙公営の最大の狙いは、公明正大で、平等でカネのかからない選挙を実現させるためと聞かされてきた。そうした本来の目的から大きく逸脱してしまっているのではないだろうか。