高校生にハンナ・アーレントを
解説させる仏のバカロレア

以前のコラムで、大学入試の制度改革にあたっては、マークシート式の知識偏重型から知識を総合的に運用する論述型の試験に切り替えるべきと申し上げました。フランスのバカロレアは、そのままの形で日本に輸入することは難しいですが、日本のセンター試験と異なり、ほぼすべてが論述形式で執り行われるところ等は大いに参考になります。

 ここでフランスのバカロレアのあらましに簡単に触れたいと思います。バカロレアとは、中等教育修了認定資格と大学入学資格を付与する試験です。創設されたのはナポレオン1世が統治していた1808年にさかのぼります。貧しい貴族の家に生まれ、一代で皇帝に上り詰めた英雄らしく、人材を発掘するために導入した経緯があります。

 日本で知られているバカロレアは、このナポレオンの時代からの大学入学資格を与える「普通バカロレア」のことですが、第2次大戦後にできた、専門職を対象にした技術バカロレア、進学をしない高卒資格付与の「職業バカロレア」もあります。フランスではバカロレアを取得できなければ、待遇のいい仕事に就けないと言われているので、良い点を取るためにあえて留年する高校生も大勢いるそうです。

 今回は大学入試の参考例としての紹介なので、普通バカロレアの話に絞ります。普通バカロレアは資格を取得すると、フランスの全土のどの大学にも入ることができます。

 センター試験と同じく、高校の最終学年の生徒が全国一斉で受ける図式は同じですが、マークシートで機械的に回答させる我が国のそれと全く異なり、バカロレアは論述式です。しかも面白いことに、3種類のバカロレアのいずれも最初に受ける科目が「哲学」というのがお国柄です。

 哲学では受験生は4時間をかけて回答します。ちなみに2014年の出題は3問。経済社会系向けの問1は「自由になる選択権があるだけで十分か?」、問2は「なぜ自分自身のことを知ろうと努めるのか?」と、それぞれ論述させ、問3では、私の敬愛するハンナ・アーレント『人間の条件』を解説させたというので驚きました。