教授と補佐官“二足のわらじ”で米仏行脚
教育について高官たちと意見交換

日本の大学入試はフランスに170年遅れている!フランスの大学入試制度は日本と大きく異なる。写真はソルボンヌ大学
Photo:puku/PIXTA

 こんにちは鈴木寛です。

 連載を少々お休みいただいた間、半月ほど海外や日本を飛び回っていました。まずは2月下旬にアメリカへ「医療イノベーション」の関係者との面談に行きました。ワシントンでは世界一のブルッキングズ研究所のカンファレンスに参加。さらにサンディエゴへも足を伸ばして、現地にいる日本人のバイオベンチャーの関係者に最新の動向をご教示いただきました。

 カレンダーは3月に入り、一度帰国するとそのまま羽田から福井へ飛び、福井大学教職大学院のシンポジウムに参加しました。ここでは、世界的に著名な教師研究者であるボストンカレッジのハーグリーブズ教授にお会いし、知識社会時代の教師のあり方についての論客である教授からインタビューを受けました。ここまでは大学教員としての出張です。

 一泊して東京へ戻ったのも束の間、今度は文部科学省の任務でフランスへ向かいました。大学入試制度改革の参考にしているバカロレアの取り組みについて、フランス国民教育・高等教育・研究省の高官にヒアリングを行うのと、パリのOECDで教育・スキル局の幹部と2030年の教育モデルに関する意見交換をするためです。

 大学教員と補佐官という、まさしく“二足のわらじ”で米仏を渡り歩いてきたわけですが、文科副大臣時代の海外出張とは違う成果があります。政治家時代も海外出張には何度も行きましたが、短期間に複数の国を渡り歩くことはたまにあるにしても、1つの国に1週間ずつほどのペースで滞在することはできませんでした。大臣や副大臣でも現地の視察には行きますが、政治家の外遊は、セレモニーも含めた様々なところに顔を出さねばならず、日程も非常に慌ただしくなり、現地の政府高官と何時間も専門的な懇談の時間を取るのが難しいことが多いのです。

 その点、補佐官の立場は、特に私のように民間登用であれば政治家と違って、テクニカルな議論や視察に大幅に時間を取りやすく、しかも時間が許せば1~2週間の滞在も可能です。さらに、相手方からみても補佐官は政治任用された“高官”なので、実務者レベルの視察ではお目にかかれないクラスの方も都合を付けていただけます。今回、OECDはシュライヒャー教育・スキル局長だけでなく、ナンバー2のカプファーラー事務次長がお会いくださいました。私だけでなく、文科省の「外交」としても実に有意義なことでした。