今年7月で80歳を迎えるダライ・ラマ14世。今回ご紹介するのは、彼の考えが凝縮された演説集『ダライ・ラマ 平和のために今できること』です。世界平和のために私たち一人ひとりができることとは何か、考えるヒントが満載です。

2008年のチベット騒乱直後の
スピーチなどを収録

ダライ・ラマ14世著『ダライ・ラマ 平和のために今できること』2008年8月刊。本書の最後には、リチャード・ギアやブラッド・ピットなど、著名人による推薦文が掲載されています。

 北京五輪の開会式が5ヵ月後に迫った2008年3月10日。中華人民共和国チベット自治区のラサ市で暴動が発生しました。チベット独立を求めるデモをきっかけに、暴徒化したチベット族が漢族を襲撃し、商店を略奪・放火したとされる事件でしたが、暴動の詳細については未だに明らかになっていません。

 とまれ、中国政府の温家宝首相(当時)は「暴動はダライ・ラマ14世の組織的な煽動によるものだ」と非難。これに対してダライ・ラマ14世は中国政府の見解を否定し、この暴動におけるチベットの処置について、「文化の大虐殺(カルチャー・ジェノサイド)に等しい」などと中国共産党を厳しく批判しました。

  もっとも、ダライ・ラマ14世は、チベットの独立を求めているわけではありません。01年10月、フランスのストラスブールで開催された欧州議会で登壇したダライ・ラマ14世は、「チベットが中華人民共和国の枠組みの中で真の自治を享受することを想定している」と演説しました。また、07年10月に行われた米国議会黄金勲章授賞式のスピーチにおいても、「チベット自治区は中華人民共和国の一部であり、あくまでも高度な自治を求めているのであってチベット独立の考えはない」ことを表明しました。

  本書『ダライ・ラマ 平和のために今できること』には、ラサ暴動18日後の3月28日、ダライ・ラマ14世が世界中の中国人に向けて発表した声明(「中国人のみなさまへ」)が収められていますが、その声明でも同様の趣旨を繰り返しています。