「百貨店に入店させてもらえただけで、業務・資本提携をした意味はあった」(酒井雅人・アインファーマシーズ経営企画室室長)

 11月27日、調剤薬局首位のアインの物販業態「アインズ&トルペ」が、セブン&アイ・ホールディングス傘下の西武池袋本店に出店した。売り場面積は735平方メートル、品揃えは1万アイテム以上。大手百貨店で、医薬品や化粧品のセレクトショップが大規模展開するのは珍しい。昨年8月にセブンと締結した業務・資本提携の賜物といえる。

 そもそも、アインが期待するセブンとの提携の最大効果は、営業赤字の物販事業を軌道に乗せることだった。この提携により来年3月、赤字の主因である郊外のドラッグ単独業態、22店舗の運営を、両社の合弁会社に移管する。郊外型ドラッグでは、ティッシュペーパーなど、セブン傘下のイトーヨーカ堂と仕入れを一括できる商品は多い。セブンのバイイングパワーを生かせる合弁会社で運営すれば、効率化が図れるとした。

 同時にアインが見込んだのが、今回の西武池袋店をはじめとする都市型店舗、アインズ&トルペのセブン店舗網への出店だ。アインズ&トルペは、店舗スタッフに仕入れ権限を与えた美容商品中心の品揃えが奏功。一番店は札幌の「地下街店」で、月に1億3000万~1億4000万円売り上げるほど支持を得る。残る成長課題の1つが好立地の獲得で、セブン傘下のそごうや西武百貨店には、あと5店程度の出店を目指す。

 ただし、セブン傘下の百貨店への出店はゴールではない。「西武池袋店などが成功すれば、百貨店業界に対するインパクトがある」(酒井室長)。アインズ&トルペは、美容商品の中でも化粧品の取り扱いが厚く、その売り上げは全体の約70%をも占める。百貨店の化粧品は比較的堅調とされてきたが、10月の売り上げは前年比5.9%減。11ヵ月連続で前年を割り込んでいる。機会があれば、他の百貨店へも出店したい考えだ。

 今年度中には下北沢にもテナント出店を予定するほか、今後はJRの駅ビルや駅ナカという最高立地も狙うという。

 アインの物販事業の目標は、首都圏を中心に5年で出店50店、売上高500億円だ。しかし、現状の売上高は132億円にとどまる。目標達成に向けてセブンの力を最大限に生かす、アインの巧みな戦略が展開される。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

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