中国・上海のショッピングモールで販売していた、約250万円するヴァーチュ製の高級スマートフォン
Photo by Izuru Kato

「ベントレー・モデル、12.7万元(約250万円)」。高級車ベントレーが250万円なら安いじゃないか、と誤解する人がいるかもしれない。しかし、実はこれ、自動車ではなくて上海で先日販売されていたスマートフォンである。

 英ラグジュアリー携帯電話機メーカー、ヴァーチュ(元ノキア子会社)がベントレーにあやかって最近発表したモデルだ(写真)。

 特徴は、(1)高品位チタンとキルト加工された滑らかな本革で包まれた外装、(2)スウェーデンの高級カメラメーカー、ハッセルブラッド製の1300万画素カメラ、(3)ロンドン交響楽団が演奏する着信音、(4)デンマークの高級オーディオメーカー、バング&オルフセンの音響、(5)24時間、世界中どこでもアシストするコンシェルジュサービスの契約も可、だそうだ。

 ベントレーに始まって、ブランド名をてんこ盛りすることで付加価値を高めようとしている。利益率はかなり高いだろう。基本構成はわれわれが使っているのと大差ないアンドロイド・スマホだからだ。数年たてば機能的には陳腐化する恐れがあるが、そんなことを気にせず購入できる財力を自慢したい人が買うスマホといえる。

 さすがに、習近平が汚職撲滅キャンペーンを遂行している中では、贈収賄に見られやすいこういった高額商品は売り上げが落ちていると推測される。ロシアの富豪たちも経済危機で以前ほどの羽振りの良さは示せなくなった。市場環境の変化を受けてか、この新型は、ヴァーチュの以前の中心価格帯よりやや低めに設定されているように感じられる(ダイヤモンドが埋め込まれた従来機種は今も1400万円超で販売されている)。

 しかし、以前、江蘇省のある村の工業団地を訪ねたとき、熱心に説明してくれた地元の20代の実直な青年は、ヴァーチュの電話機について、「今はお金がないので欲しいとは思いません。でも、もし将来金持ちになったら当然買うと思います」と語っていた。

 潜在的にそういった需要が中国にあることを計算して、アップルは18金のスマートウォッチを1万ドル超で売り出すのだろう。