「このタイミングを待っていました」
9月初旬、純国産スマートウォッチをこの冬発売するベンチャー企業「ヴェルト(VELDT)」の野々上仁・代表取締役社長は、そう切り出した。
アップルからついに「アップルウォッチ」が発表され、スマホメーカー各社も腕時計型端末やスマートグラスを相次いでバージョンアップしている。いよいよウェアラブル端末の普及に弾みがつきそうな状況だが、当然競争も激しくなりそうだ。新興企業は埋没してしまいそうな気もするが、野々上社長に不安の表情はない。
アナログ時計に
小さな表示部を付けた
ヴェルトは、どんなスマートウォッチを作ったのか。
12月に発売を予定している第1弾「VELDT SERENDIPITY (ヴェルト・セレンディピティ、以下・ヴェルト)」の最大の特徴は、普通のアナログ時計と同じ、リアルな文字盤と針を備える「アナログウォッチ」であること。
スマートウォッチといえば、フェイス部分が小さな液晶のタッチパネルというのが定番だが、ヴェルトはあえてアナログにこだわる。情報表示は、たった1行の細いモノクロディスプレイが文字盤の中にあるだけだ。この組み合わせを見て、1980年代に「セイコー・ハイブリッド」という腕時計があったのを思い出した。
見た目は「腕時計」そのものだが、スマホで受信したメールや電話の着信、SNSなどを通知するスマートウォッチとしての基本機能を一通り備えている。また、時計に内蔵されたセンサーが身体の活動量を測定し、スマホアプリに転送するヘルスケアの機能もある。
だが、見てわかるとおり、他のスマートウォッチのようにメールの内容を読んだり、SNSに応答するようなことはできない。
「そういうことは、元々スマホでやるほうが適しています。この時計の基本コンセプトは、『スマホからの解放』ですから、多機能にしていって“腕に着けるスマホ”になってしまったら、本末転倒なのです」