

SNS会社は「無料」をうたい文句に利用者を呼び込み、これまで取得が難しかった実名のプロフィールや、友人とのつながりといったプライバシー色の強い情報を、ユーザー自らに登録させ、吸い上げることに成功した。
併せて、ユーザーの投稿内容も蓄積。個人の関心や当時の感情など、より個人の欲求が分かるデータを大量に集める仕組みを整えたのである。
それまでの行動ターゲティング型広告は、ネットにおける利用者の「足跡」を追っているだけで、個人の情報は匿名化され、その足跡を自ら削除することもできた。
それがSNSの登場によって、よりダイレクトに個人データを利用する流れへと向かったのである。
では、こうして集められた個人データが、実際にどうやってカネになっているのか見ていこう。
たとえば、大手飲料メーカーA社がSNSを活用してビール広告を打った場合をみてみる。
A社のような大手には予算枠がある。ネット広告に500万円の予算を確保したとすると、A社はまず広告代理店に相談する。
すると代理店は、フェイスブックやツイッターを利用したプロモーションを提案。その際、できる限り商品の購入層に近い人たちにアプローチするため、ターゲットを細かく絞ったメニューも合わせて提示する。
例えばフェイスブックなら「都内に住む20代の女性」というだけでなく、「あるアイドルが好き」「酒に関心がある」といった具合だ。
ツイッターであっても、「あるアイドルをフォローしている人」というだけでなく、「1週間以内にA社のことをつぶやいた人」などと、その中身まで詳細に決める。
実際に広告を配信するとき、SNSが何かをしてくれるわけではない。全てシステムで運用されるため、広告代理店は運用会社に委託する。