

かつて私がGEの一員だったころ、ジェフ・イメルト会長が来日し、タウンホールミーティングで「どのようにすればあなたのような素晴らしいリーダーになれるのか」という獏とした質問に答えてくれた。
「私も毎日、ベッドに入るときに自分の至らなさに思い悩む。だが朝に起きるときには、鏡に向かって、自分こそが名誉ある世界企業を牽引するにふさわしいリーダーなのだ、と言い聞かせている」
まだ足りないと認め、なお前に進もうとするその謙虚さに、私は衝撃を受けた。イメルト会長は、きっと今もなお、私などよりも桁違いに早いスピードでリーダーとして成長を続けているのだろう。
新生フィナンシャルはGEから新生銀行に事業売却されたが、元の“親”に負けてはいられない。だから私も、常に明日こうありたいという自分の姿を描き、それに向けて毎日たくさんの人とダイアログを重ね、自問自答を繰り返す。自分だけではない。同僚とリーダーシップのあり方を突き詰めて語り続け、課題を確認し合い、お互いに高め合いながら突き進む。学び多き同僚には、もっと大きな課題を与え、また私との真剣勝負の競争に巻き込む。体のトレーニングも積む。ラーニング競争を牽引し、組織の隅々にエネルギーをばらまくことこそが私の最大の仕事だと思っている。
皆さんも、自分の属する組織を見渡してみよう。事業という終わりのない勝負をするにあたり、自らがイノベーターとなり、時にはペースメーカーとなり、いざとなればバックアップとなるようなロールモデル、何より溢れるエネルギーを与えてくれるラーニング・アニマルはその場にいるか。
もしラーニング・アニマルが一人も見当たらないなら、あなたが属する組織は明らかにあなたの成長を阻む。あなたの心の消えそうな火で、「濡れたローソク」(もたれ合いの場)を灯そうとするのは時間の無駄だ。自らの成長を求めて、一歩踏み出す勇気を持とう。
なかには、外資系か日本企業かというキャリアの選択に悩む人も多いだろう。私なら、自分の力を引き出し、使い倒すために、キャリア・オポチュニティを豊かに提供してくれる企業を選ぶ。学びの場の選択において、企業の国籍は問題ではない(自己実現の場を選択する際には、企業の国籍は重要な要素になる可能性はあるが)。
世界中のチャンスに目を向け、そこで勝負するのだという覚悟が湧き出ているリーダーをロールモデルとして、その人の胸を借りるべきだ。あなたがそうしなければ、世界の他の誰かがきっとその機会をつかむ。
洋魂和才も、和魂洋才も、大いにあり、である。
明日からあなたは、世界の人財と勝負している。