イオンが発表した60店舗の撤退戦略が、地方都市を揺さぶっている。その中心は、不振を極めるジャスコなどの総合スーパーだ。核店舗の閉鎖は、ショッピングセンター(SC)の撤退に直結する一大事だけに、地元への影響も計り知れない。撤退騒動に揺れる街の今を追った。

 「新聞にイオンが60店舗を閉鎖すると報道されているが、情報は持っているか」

 10月の上旬、山形県の本庁から入った一本の電話に三川町役場の企画課職員は驚いた。町も県もイオン側への連絡を試みたが、結局、イオン三川SCの存続についての回答は得られなかった。

 イオンが10月に発表した2008年8月中間期決算(連結)は、営業利益が586億6100万円と前年同期比で13%の減少。なかでも、国内の総合スーパー事業の営業利益は、衣料の不振も響き88%も落ち込んだ。

 立て直しを急ぐイオンは、11年2月までに60店を閉鎖することを決定。このうち「40店がジャスコやサティなどの総合スーパー」(イオン)である。

 すでに、来年2月にジャスコ徳島店を核店舗とする徳島リバーシティ、3月に大分サティ、6月は会津サティの各SCを閉鎖することが明らかになっている。だが、地権者や役所など地元との交渉時期が「地域ごとに異なり、まったく話をしていない地域もある」(同)のが実情だ。

 三川町の担当者の不安は、募るばかりだ。なにしろ、このSCについては、地元住民からも「平日は駐車場のクルマが少ないようだが、大丈夫なのか」と、存続を危ぶむ声が届いていたからだ。

 仮に核店舗のジャスコが撤退となれば、SCそのものも閉鎖となる可能性が高いだけに、打撃は計り知れない。「住民の生活が不便になるだけではなく、雇用面と税収にも響く」(企画課)。

 10月下旬の金曜日、約11万平方メートルの広大な敷地に広がるイオン三川SCの駐車場は閑散としていた。その埋まり具合は、ざっくり、2~3割である。