4月16日、アデランスは国内投資ファンドのユニゾンと資本業務提携を行うことを発表した。ユニゾンはTOB(株式公開買い付け)を行い、重要議案に拒否権を行使できる35.2%以上の株式を目指すという。

 この連載の第32回で、昨年のアデランス株主総会にて役員決議が否決され、スティール・パートナーズによって窮地に追い込まれたという異例の事態について取り上げた。その後、スティールによって劣勢に立たされてしまったアデランスだが、一転、ついに起死回生の策に打って出たかという印象だ。

 スティール・パートナーズの共同経営者でアデランスの社外取締役に選任されたジョシュア・シェクター氏は、ユニゾンとの業務提携が提案された取締役会の中で、「あなたたちはクビだ」と猛烈に反発をしているとの情報も伝えられており、両者の対立はより一層激しくなっているようだ。  

 5月28日に行われる定期株主総会では、TOBの行方をも左右する両陣営の提出している新経営陣の選任議案に対する是非が問われることになっており、両者の委任状争奪戦に注目が集まっている。多くのメディアでは、争奪戦の行方は不透明としているが、実際どちらの陣営が委任状争いを制する可能性が高いのだろうか。

何としてもスティールと決別したかった
アデランスが譲れない条件とは

 その前にまず、アデランスがスティールとの対立の中で、ユニゾンとの業務提携を決断するまでの経緯を振り返ってみよう。

 当時、約26.7%のアデランス株を持つスティールの影響により、昨年5月29日の株主総会にてアデランスが提出した役員決議が否決された後、岡本孝善社長は退任。同社の100%子会社で女性用かつら販売のフォンテーヌの早川清社長が新社長となった。そしてスティールからは、社外取締役としてジョシュア・シェクター氏を迎えた。

 だが、スティールとの関係を整理したいアデランスは、昨年8月の臨時株主総会後に、40社超の提携先候補に声をかけ、10月に1次入札を実施。 12月の最終入札にはユニゾンのほか、米カーライル・グループや米ベインキャピタルが残っていたという。

 ところで、なぜこんなにもアデランスはスティールとの提携を嫌ったのか。その最も大きな理由として多くのメディアは、株式の公開か非公開についての議論が両者の間で立ち行かなかったことを報じている。株式の非公開化を要求するスティールに対し、会社は「上場維持」を希望。スティールとの関係を何とか解消したい同社に対し、一番魅力的な案を示したのがユニゾンだったのだという。こうしてアデランス・ユニゾンの連合は生まれた。

 ただ私には、ユニゾンとスティールとの間に明確な差があるとは思えない。確かに外資か国内ファンドか、敵対的か友好的かといったことは差として挙げられる。しかし、両者が提出している新経営陣の選任案を見ると、スティールとユニゾンの間に、それほど差があるとは思えない。