
永沢 徹
最終回
「企業の破綻」と聞くと悪い印象を抱きがちだ。しかしそれは大いなる誤解である。実際には法的な破綻処理手続きによって再生への見通しがつき、法的破綻後の会社や事業は買収先として「有望」な場合も少なくない。

第72回
アイフルが「事業再生ADR」を申請し、受理された。法的整理でも完全な私的整理でもない「第3の道」であるこの手法を利用する企業は増えている。今回は、その仕組みや手続き・メリットについて説明していこう。

第71回
企業内で潜在的に存在している「パワハラ」だが、その性質上認定されにくいのが問題となっている。しかし最近、複数の訴えであったり、会社の対応が余りにも杜撰だった場合には、認定されるケースも出てきている。

第70回
ローソンとマツモトキヨシの業務提携は、小売りの業態を超えた強力提携として注目を浴びている。しかしこの提携は、飽和・寡占化する市場の中で生き残るために、必要不可欠で、理にかなった連合だといえる。

第69回
日立が上場子会社5社を完全子会社化する。それに辺り、これまで維持されてきた“親子上場”の関係は解消されることになる。この“親子上場”は親子会社の利益相反を生むなど弊害が多い。今回はその問題点に迫ろう。

第68回
金融庁は持ち合い解消のため「株式持ち合い」の開示を義務化する方針を決めた。「株式持ち合い」は買収防衛策として増加傾向にあったが、昨秋からの金融危機によって“副作用”を起こし始めたのだ。

第67回
かねてから経営統合が囁かれていた新生銀行(以下、新生銀)とあおぞら銀行(以下、あおぞら銀)が、ついに「合併に向けて合意した」旨を発表した。両行の7月1日付けプレスリリースによると、2010年に予定される両行株主総会の承認と関係当局の認可を前提として、両行が統合契約に調印したという。昨年秋以降の金融危機で経営難に拍車がかかり、窮地に陥った両行にとって、今回の合併は生き残りをかけた最後の策ともいえる。果たして、新銀行は窮地から抜け出し、復活することができるのだろうか。

第66回
6月22日、コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、消費期限が近づいた商品を加盟店が値引き販売することを不当に制限していたとして、公正取引委員会から独占禁止法〔優越的地位の濫用〕違反で、排除措置命令を受けた。今まで特に流通における「優越的地位の濫用」の問題は、多くが対納入業者との関係であった。それに対して今回は、フランチャイザーが加盟店に対して優越的地位の濫用をしたと判断された新しいケースといえる。

第65回
6月5日、読売新聞の夕刊が「楽天が上新電機を含む複数の出店企業に商品購入者などのクレジットカード番号とメールアドレスを1件10円で提供していた」と報じた。楽天はこれに対して、「楽天市場からのお知らせ」の中で「上新電機様をはじめ9社の企業様に対しては、お客様が購入されます買い物かごのステップで、『例外的にクレジット番号の開示を受け、独自に決済処理を行なっております。詳しくはこちら』というお断りをさせて頂いた上で、店舗様において独自に決済を行なっております。」と説明し、「個人データ提供は規約で説明しており問題ない」という立場を示している。しかし、楽天は2005年、楽天市場への出店企業元従業員が不正アクセスをし、個人情報36239件・クレジットカード番号1万件が流出するという事件を受け、それまで企業側に提供をしていたカード番号とメールアドレスの提供をやめ、商品発送に必要な「住所」「氏名」「電話番号」に限定する方針を打ち出していた。

第64回
連邦破産法申請が濃厚となったGM。「事前調整型チャプターイレブン」で申請をするとみられており、その再建計画は、通常のチャプターイレブンや日本の民事再生法に比較すると、スムーズに進むのではないかと考えている。

第63回
今月経営破綻したパシフィックホールディングス傘下の不動産投資信託法人(REIT)、日本レジデンシャル投資法人のスポンサーが国内勢4社に絞り込まれたと報道があった。三菱地所、野村不動産、伊藤忠商事…という国内大手企業が手を挙げているそうだ。また、J-REIT初の破綻をしたニューシティ・レジデンスも、先月7日に投資ファンドのローン・スターをスポンサーに選定したと発表しており、親会社の選定が投資家たちの注目を集めている。それにしても気になるのは、パシフィックの会社更生法申請以降、投資口価格が上昇を続けていることだ。その理由を分析してみよう。

第62回
4月16日、アデランスは国内投資ファンドのユニゾンと資本業務提携を行なうことを発表した。ユニゾンはTOB(株式公開買い付け)を行ない、重要議案に拒否権を行使できる35.2%以上の株式取得を目指すという。アデランスといえば、昨年の株主総会において、それまで同社とつばぜり合いを続けてきたスティールに大株主がこぞって協調したため、社長以下当時の主要な役員が全員辞職に追い込まれたという経緯を持つ。それ以降、まさにスティールに首根っこを握られた状態が続いて来た。しかし、風雲急を告げるユニゾンの「参戦」により、アデランスの形勢が逆転する可能性が高まって来た。というのも、つぶさに分析すれば、今回の発表の背景にはかなり「巧みな戦略」が垣間見えるからだ。

第61回
東証1部上場で繊維染色大手のセーレン(福井市)が入社式の直後、新入社員101人のうち72人に、「自宅研修」との名目で約半年間の自宅待機を命じていることがわかった。この他、富山市にある自動車部品メーカーの田中精密工業も4月に入社した新入社員ほぼ全員にあたる30人を3~6ヵ月間、同市の不二越も新入社員73人全員を6ヵ月間自宅待機させている。いずれの企業もその間、賃金の6~8割程度にあたる休業補償を支払うという(労働基準法により、休業扱いとなった従業員には、最低賃金の6割を補償しなければならないため)。実はこの、新入社員の「自宅待機」は、昨年度話題になった「内定取り消し」の延長線上で発生した問題といえる。いや、むしろ「内定取り消し」が形を変えて表面化した結果といえるかもしれない。

第60回
第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を『つみきのいえ』が受賞するなど日本のアニメ産業は国際的に極めて高い評価を得ているが、狭い業界であるがゆえに問題点も多い。今年1月に公正取引委員会が発表した実態調査で、同業界に蔓延する下請け制作現場の“疲弊”が明らかになった。小規模業者が大半を占めるアニメ業界においては、発注者側が優位に立っていることが多く、不当に低い制作費や厳しい納期を押し付けられる、いわゆる“下請けいじめ”が蔓延しているという。

第59回
今年に入ってからも企業倒産が相次いでいるが、その倒産処理において大きな“変化”が起きている。それは、民事再生から会社更生への“回帰”。『DIP型会社更生』という新しい倒産手続きが登場したからだ。

第58回
一連の報道を見ると、オリックスも非難の対象となっているようだが、むしろ一番責められるべきは、おかしな売却ルールを作った日本郵政と、今回の入札を仕切ったアドバイザー(メリルリンチ日本証券)である。

第57回
村上インサイダー事件の控訴審判決が東京高裁で出された。村上被告の「量刑」ばかりが注目されるているが、最も注目すべきはインサイダー認定の決め手となる「重要事実の判断基準」が“修正”されたことにある。

第56回
7年間塩漬けにされてきた「ワークシェアリング」論が復活したことには、筆者は「いまさら」という違和感を感じる。当時、政府も経団連も連合も、「正社員を守ること」に終始し、ワークシェアリング導入の判断を個別の企業に委ね、本格的な議論を避けた。その一方で、政府と企業は、派遣職種の拡大という「規制緩和」だけは推し進めた。その結果、副産物として生まれたのが、いま問題になっている“派遣切り”である。

第55回
上場企業で、前代見聞の「社内融資」の事実が発覚したという。その会社の名は、株式会社アトリウム。大手ノンバンク・クレディセゾンの子会社で、東証一部に上場している不動産会社である。社長が金融機関から借りていた約20億円もの巨額の借入金を会社に肩代わりさせたうえ、そのうち11億円を“貸倒引当金”として中間決算で損失計上していたというのだ。そもそもアトリウム社長・高橋剛毅氏は、なぜそのような巨額な借金をしていたのか――。それは、ストックオプション(自社株購入権)で生じた税金の支払いのためである。

第54回
2008年8月に経営破たんした新興不動産会社のアーバンコーポレイション。それから4ヵ月。12月22日、東京地裁に再生計画案が出された。しかし、“再生”とは名ばかりで、事実上の「解体」である。これまでスポンサー企業を募って事業の一体的再生を模索してきたようだが、事業全体の担い手が見つからず、事業の一部を投資グループなどに譲渡したうえで、結局会社そのものは清算されることになった。
