「まぁ、真逆の結果ってことだね」。5月8日、決算説明会を終えた東レ本社の一室では、アナリストが声を潜めてこんな会話を繰り広げていた。同社の決算と、同日に発表された同じ大手繊維メーカーの帝人のそれを比べての評価である。
2015年3月期の決算は、両社の明暗がはっきり分かれた(下図参照)。東レは順風満帆。売上高、利益共に過去最高をたたき出した。
炭素繊維や水処理事業で16年3月期への出荷のずれ込みがあるなど、営業利益は当初見込みに65億円届かなかった。が、それでも17.3%増の2桁成長を遂げている。
一方、帝人は特別損失として減損損失と構造改善費用を合計471億円計上したため、前期から一転、81億円の最終赤字に終わった。昨年11月に修正中期計画として発表した不振事業の損失処理が響いたかたちだ。
例えば、新興国の台頭で汎用品の価格競争が激化している電子材料・化成品事業では、電気代の高いシンガポールのポリカーボネート樹脂(CDなどの原料)の工場撤収を決定した。高機能繊維事業でも、ポリエステル繊維を生産する徳山事業所を閉鎖する。