今回は、躍進するベンチャー企業(正社員数400人)で働く、34歳の男性社員を取り上げたい。中途採用を経て入り10年近く経つが、ここ数年、理不尽な扱いにキレそうになる日々だという。

 社長や役員たちが、よその会社からハンティングを繰り返し、地道にキャリアを積んできた若手社員を認めないのだという。最近は、自分よりも若く実績にも乏しい男性がハンティングされ、なぜか部長になった。

 怒った男性社員は、すでに退職した者との「密談」を繰り返し、自分も近いうちに辞めようと決意した。特に「ベンチャーに長くいるやつって、バカだとつくづく思うよ」という言葉に感化されたようだ。そんな彼の胸の内を聞いた。


「また変なやつが入ってきた……」
役員はヘッドハンティングばかり

「また、わけのわからないやつが来た……」。躍進するベンチャー企業では、ヘッドハンティングの名目で、経営者の“お友達”が高待遇で迎えられる。 長く務めてきた社員は、浮かばれない
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「〇〇って、あの人のこと?テレビの番組に時折、出るよね」 「また、変なやつか……」

 昨年秋、イントラネットに新たに役員になった男性の氏名が載った。50代前半の「IT関連の研究者」であり、「タレント」だった。

 法人営業部(部員60人)のマネジャーの大石(34歳)は、怒りが湧いてきた。同じフロアにいる社員たちからは、あきらめに近いため息が法人営業部のオフィスのところどころから聞こえてくる。

「今度は、タレント崩れかよ~」「いや、研究者崩れだよ……(笑)」「どちらの世界でも、通用しないんだろう?」「うちの役員会は、ハローワークかよ(笑)」