「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。
会社は何のためにあるか?
会社は何のためにあるか?
僕の答えはシンプルです。
世の中に価値を提供するためにある。これがすべてです。
もちろん、利益も大切です。利益が出なければ会社を存続させることはできません。しかし、利益が出るか出ないかは結果論にすぎない。価値を提供すれば、その結果として自然と利益はついてくるのです。
むしろ、利益をビジネスの目的にすると危ない。どの企業でも儲けを優先し始めると、ユーザーはその変化に必ず気づきます。「あ、何かスイッチが入ったな」と。対価に見合う価値を提供しているうちは、それでも支持してくれますが、儲けを優先していることがわかったら、ユーザーは一気に離れ始めます。インターネット業界でも、そうして衰退していった企業がたくさんあります。
長く続くものとは、納得感をもってお金を払ってもらえるものだと思います。そのためには、利益よりも価値を生み出すことに集中することです。とにかくユーザーの満足感を高めることに注力すべきなのです。そして、ユーザーも企業も、双方が喜べるエコシステムのようなものをつくり出すことが重要なのだと思います。
だから、僕はお金を中心にものごとを考えることはしません。
たとえば、アウトソーシング。アウトソーシングをすれば、コストカットはできるでしょう。しかし、よほど信頼できる会社でなければ、仕事をアウトソーシングすることは極力避けてきました。
もちろん、ノウハウが漏れてしまうリスクも考えましたが、それ以上に重要なのは、多くの会社が「受注体質」だということです。「この仕事をお願いしたい」と相談すると、「いくらですか?」と返ってくる。「どんな価値を生み出したいのか?」「そのためには何が重要なのか?」。そうした本質的な議論がなかなかできない。逆に、価値を下げてでも、コストを下げたいと言い出す会社もある。それでは、とてもではありませんが価値を生み出すことなどできません。
面白いエピソードがあります。
あるパソコン・メーカーの話です。かつて、その会社はすべての工程を自社内で行っていたのですが、あるとき組み立てをアウトソーシングしました。すると、コストカットにつながった。そこで、「あれもこれも」とアウトソーシングを増やした結果、社内でやることが何もなくなってしまったというのです。お金を中心にモノを考えると、会社はカラッポになってしまう。それを象徴するようなエピソードだと思います。