明らかになる
火薬の経年劣化リスク

 ところが、である。今回の発表は、その内容を見れば明らかな通り、本来はことさら“勝ち負け”を強調する類いのものではない。

 タカタは5月18日、NHTSAに対して4通の不具合情報報告書(Defect Information Report)を提出。同時に、予防的措置を目的とするエアバッグ回収の対象地域について、確かに高温多湿地域から全米に拡大する「同意指令(Consent Order)」に署名した。

 だが、この「同意指令」の内容からも、「科学的根拠が明らかではない中、欠陥認定はできない」という、これまでのタカタのスタンスに変化は見られない。事実、欠陥は認めていないのだ。

 それもそのはず。不具合の原因がついに究明されたという話ではなく、タカタの過失が新たに認められたわけでもないからだ。

 米世論や議会の圧力の下、表向きは“勝利宣言”せざるを得なかったNHTSAとて、実際には根拠もなく強制リコールに踏み切るわけにはいくまい。タカタと法廷で争えば、欠陥の存在を立証できず敗訴する可能性もある。

 これまで全米リコールに否定的だったとはいえ、タカタは不具合が発生していながら原因が特定できていない案件については、この分野で権威のある独フラウンホーファー研究所に第三者調査・検証を依頼していた。

 どういう範囲でリコールをかければ追加的な事故の発生を防ぐことができ、かつ原因究明を急ぐことができるか──。独調査機関が15年3月にまとめた中間報告を受けて、タカタは水面下ではNHTSAと足並みをそろえて協議を進めてきた。

 その結果、型式や使用年数、使用環境条件などに基づき、リコールを段階的に全米に拡大した方がいいものもあれば、今後の拡大を検討すべきものもある、というのが今回の発表の中身だ。

 独調査機関の中間報告などからも徐々に明らかになりつつあるが、一連のエアバッグ問題のポイントは、次の2点だと思われる。

 ①タカタのエアバッグは(製造ミスなどは別として)、自動車メーカーや米当局が求める性能基準は基本的に満たしていた。

 しかし、②2000年代からエアバッグに使われ始めたばかりで、歴史のまだ浅い現在の火薬には、どうやら経年劣化リスクがあることが分かってきた。

 ここから示唆されるのは、当局や自動車メーカー、エアバッグメーカーそれぞれが責任のなすり付け合いをするのではなく、エアバッグで使用する火薬には、耐用年数を設ける定期的な交換制度が必要なのでは、という議論だろう。