2014年11月初旬、関東近郊のホンダのある自動車ディーラーは、顧客対応に追われていた。タカタ製エアバッグの不具合が取り沙汰されていたためだ。

一連のリコール対象となったエアバッグのガス発生装置は、メキシコ工場(写真)と、ここに移す前の米国工場で製造された
Photo:REUTERS/アフロ

「なんで今すぐ交換できないんだ」

 事情説明を聞いた対象顧客の表情に、不安と焦りが浮かぶ。

 無理もない。エアバッグが開く際に、中の火薬が暴発し、乗員を負傷させる恐れがある。ところが、いざディーラーに足を運んでも、すぐに交換してもらえるとは限らないからだ。

 ホンダに限らずトヨタ自動車や欧米勢など、タカタ製エアバッグは数多くのメーカーが使っている。しかも、13年春、14年夏と2度にわたり、世界中で同時多発的に大規模リコールが発生したため、交換部品の供給が追い付かなかったのだ。

 ただ、11月末になると、国内の改修率は約66%に達し、現場対応も、「ようやく落ち着いてきた」(ホンダのディーラー)。整備士たちも一息ついたころだった。

 ところが、そんな現場を尻目に12月初旬、ホンダとマツダが米国で実施していた高湿地域限定のリコールを、米当局の要請に応じる形で全米に拡大。それに伴い12月中旬、日本でも全数回収調査の実施に踏み切ったのだ。

「また波が来る」──。ホンダの店舗担当者は、来る3度目の大規模リコールに顔を曇らせる。