コアなファンとの接点を
どこに置くべきか

 とはいえ、これらのポスターがここまで話題になった最大の要因は、ポスターそれ自体の持つ、クリエイティブとしての完成度の高さでしょう。

「ハンカチ(王子)」と「ビリギャル」という、時代にマッチしたキャッチコピーは、両大学の学生や関係者、卒業生のみならず、広く一般にも受け入れやすい響きがあります。一方で、「若き血」「紺碧の空」という両大学の応援歌を絡ませたコピーは、世代を超えてたくさんの卒業生を熱い気持ちに駆り立てたに違いありません。

 それに輪を掛けて功を奏したのは、タッチポイント(接点)戦略です。

 ポスターは決して大量に印刷されたわけではなく、慶應大学に関しては、三田、日吉の両キャンパスに2枚ずつが張られ、残り1枚は、慶大生がよく通うラーメン屋さんに掲示されただけだといいます。

 コンテンツを「オウンドメディア」(自社のホームページや会報誌など)、「ペイドメディア」(いわゆる広告出稿)、「アーンドメディア」(第三者が持つメディア)のどこに置くと、最も効率よく広がるかという課題において、キャンパスという「オウンドメディア」の他に、「慶大生がよく通うラーメン屋さん」という「アーンドメディア」を選択したことの意味は大きいと思います。

 というのも、このラーメン屋さんには、私も含め卒業生にも熱狂的なファンが多く、卒業後も仕事の合間を縫ってここを訪れる人も少なくないのです。彼らも、今回のポスターを広める上で、強力なエバンジェリストだったのではないかと考えられるからです。

 最初にこのポスターの存在を知った時、もしかしたらこれは、慶應、早稲田の関係者の中だけで盛り上がるのかな、とも考えたりもしました。しかし、私がシェアしたFacebookのポストに「いいね」をしてくれた人を見てみると、両大学とは関係ない方も多く、また、Facebook以外でも、ウェブに上げられたコメントには、クリエイティブを賞賛する声が幅広い層から寄せられていました。

 今回の事例からは、コアなファンを持つブランドにおいては、そのコンテンツの持つパワーと、ファンの存在をうまく掛け合わせるフレームワーク、そして、これを拡散するモチベーションとなり得る優良なクリエイティブがあれば、必ずしもマスに訴えずとも多くの人にメッセージが伝わるという、現代マーケティング手法の効果を実感させられました。