住友ゴムは米グッドイヤーとの提携解消後も、米国では新車装着用について、日系自動車メーカー向けのダンロップ商標使用権を得た
Photo by Diane Macdonald/gettyimages

 提携解消の仲裁交渉は、意外に早く終わったという印象だった。

 6月4日、「ダンロップ」ブランドで知られるタイヤ国内2位(世界6位)の住友ゴム工業は、世界3位の米グッドイヤーとの資本・業務提携を解消した。

 2014年2月、グッドイヤーは住友ゴムに対して突如、提携の解消を申し入れた。と同時に、国際商業会議所にも提携解消に向けた仲裁を申し立て、その行方に注目が集まっていた。1999年以降、16年にも及んだ “婚姻関係”は、わずか1年強の交渉ですんなり“離婚”が成立したことになる。

 その背景には、市場環境の変化がある。「(提携の)スタート時は、需要の8割が日米欧だった」(池田育嗣・住友ゴム社長)。当初目指した日米欧での協業よりも、今や新興国では競合の色合いが濃くなりつつあったわけだ。実際、グッドイヤーは“離婚宣言”の理由として、住友ゴムの反競争的な行為を挙げていた(住友ゴムは反論)。

 しかし問題は、提携解消が成立すれば、住友ゴムは、欧米市場でダンロップブランドを全て失う可能性があったことだ。

 両社はこれまで「ダンロップ」「グッドイヤー」両ブランドにおいて、日本では住友ゴムが75%出資の、欧米ではグッドイヤーが75%出資の合弁会社がビジネスを展開。つまり住友ゴムは、主に北米でグッドイヤーの販売網を借りて事業拡大の果実を得てきた代わりに、欧米でのダンロップブランドの主導権は譲っていたのだ。

 ところが今回の提携解消の中身を見ると、欧州では予想通り新車装着用と交換用(市販用)の両方でダンロップ商標使用権を失ったものの、米国では新車装着用について、日系自動車メーカー向けでひっそりと商標権を勝ち取っていることは注目に値する。