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マーケットが見える!人のココロをつかむセオリー

ついに音楽販売のパンドラの箱が開いた

アクセス権に対価を払うモデルはどこまで広がるか

藤田康人 [インテグレート代表取締役CEO]
【第80回】 2015年6月22日
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音楽のデータ買いで
生まれるものは何か

 私はどちらかといえば、音楽が好きな部類の人間だと思いますが、それでも最近では、移動中の車の中で聴くためにCDを買いに行く以外、自ら積極的に音楽を購入したり、ダウンロードしたりすることはほとんどなくなりました。

 10年前の話になりますが、無性に昔聴いたディスコミュージックが聴きたくなる時がありました。

 その思いに駆られて80年代ディスコミュージック特集のCDを何枚か買ったのですが、私が大好きだった曲はどのCDにも収納されていません。中古レコードショップをくまなく回り、それでも見つけることできずあきらめかけていた時、出張でふと立ち寄った長崎の中古レコード店でその曲を見つけて感激した、という思い出があります。

 しかし、現在ではネットで検索すればYouTubeで苦労せずに、ほとんどの曲を簡単に入手できるようになりました。

 これは「音楽のアンビエント化」とでもいいましょうか。アンビエントとは、「環境の」とか「周囲の」と訳されますが、ジャーナリストの佐々木俊尚さんが、著書『電子書籍の衝撃』の中で、このことについて述べています。

 まさに音楽は、どんどん空気のように、好きな時に好きな音楽が自分の周りにあって当たり前の存在になりました。

 音楽のアンビエント化が進んだことにより、もう一つ、かつてのレコードジャケットやCDのパッケージをコレクションとして大切に並べる音楽ファンの姿は、もはや過去のものとなりました。

 さらに、定額制音楽配信サービスには、プレイリスト機能が付いています。私が学生時代に気合いを入れて作ったオジリナルテープが、スマートフォン上でいとも簡単に、短時間で作れてしまいます。

 このままでは、音楽コンテンツの価値がどんどん下がっていくのではないかと、とても心配な反面、同時に、今まで聴いたこともない音楽に思いがけず出会える機会も増えるのでは、という期待も膨らみます。

 はたして、日本の音楽マーケットに定額配信サービスが根付くのか、そして、新規の音楽ファンを増やすのか、はたまた、私のような休眠ユーザーが戻って来るのか。さておき、広範な人々がデータのアクセス権に対価を払うというビジネスモデルは、音楽販売を皮切りに、他のマーケットにも広がっていくかもしれません。

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藤田康人
[インテグレート代表取締役CEO]

慶應義塾大学を卒業後、味の素株式会社を経て、92年、フィンランド人の社長と二人でザイロフィン ファーイースト社(現ダニスコジャパン)を設立。素材メーカーの立場から キシリトール・ブームを仕掛け、キシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。07年、株式会社インテグレートを設立し、代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』『99.9%成功するしかけ』 『漂流する広告・メディア』講演活動も行っている。integrateGroupウェブサイト:http://www.itgr.co.jp/

マーケットが見える!人のココロをつかむセオリー

インターネットなど双方向メディアの普及に伴い、従来の広告メッセージが届きにくい時代になったと言われます。どんな方法なら消費者とのコミュニケーションが成立するのか。「次世代IMC」を掲げる注目のマーケティング企業CEOがその極意を伝授します。

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