しかし、本当にトヨタのような超大企業が発言通りの人材を評価し、育成することができるのかというと、話は別だ。そもそもトップが人材のあるべき姿を外部向けに表明するときは、「昔はよかった」という過去へのノスタルジーや、現状への不満、未来への展望が背景にある。おそらくトヨタも、トップの目から見れば、海外市場や新領域においていくらでもバッターボックスに立てる機会が用意されているのだろう。

 ところが、彼らは現場で人材を評価したり、育成したりする立場にはいないため、一般の管理職レベルとの間には視野の広がりや時間スパンの認識に大きな隔たりがある。現場の課長や部長に聞けば、「バッターボックスに何度も立つ?多くの人が順番待ちをしているのに、失敗した人間に何度も機会なんかありませんよ」という答えが返ってくるだろう。

現場の監督がほしいのは
地味でも確実にヒットを打てる人材

 再び野球の話に戻るが、「三振することがあっても絶好なタイミングでホームランを打つバッターがいれば試合が盛り上がる」という意見には、監督も異論はないだろう。しかし、実際には4回に3回三振する選手より、確実にヒットを打って一塁、二塁と進んでくれる選手のほうがありがたいし、そうでなくても進塁打を打って、最低でも塁上の走者を次の塁に進めてくれる選手のほうがいい。そのほうが試合には勝てるからだ。人気も大事だが、監督の最大の仕事は、まずは勝つことだからである。

 現場の管理職も同様である。管理職自身がまずは成果を上げることを求められているのであって、その成否に自らのビジネスパーソン人生もかかっている。「失敗しても何度も挑戦させろ」などと言われても、失敗し続ける人材に何度もチャンスを与えるようなモノ好きはいないだろう。人材育成も大事だが、まず大事なのは成果を出すことだからである。