「功成り名を遂げる」コストか?
「私の履歴書」は呪われているのか?

 日本経済新聞の朝刊最終面に載っている連載「私の履歴書」は、毎月1人を取り上げて月初から月末まで自伝風の文体で人生を紹介する名物連載だ。最終面の見やすい場所にあるので、この連載の読者は多いだろうし、この欄への登場は、「功成り名を遂げた人」の認定を受けたようなものだ。「将来はこの欄に登場するような人物になりたいものだ」と人生の目標を決めている人もいるのではないか。

 しかし、日経から「私の履歴書」への登場依頼があっても、あなたが企業の経営者ないしは経営者OBなら、登場するかどうかを慎重に考える方がいい。

 興味深いグラフをご覧いただきたい。これは、岡三証券のシニア・クオンツアナリスト栗田昌孝氏が発表したレポートに載っていたグラフだが、2005年から2015年に「私の履歴書」に経営者ないし経営者OBが登場した会社39社の、ROE(自己資本利益率)の推移を調べたものだ。栗田氏はこの現象を「『私の履歴書』の呪い」と名付けた。

◆「私の履歴書」の呪い(2005年〜2015年)

岡三証券グローバル金融調査部クオンツ分析グループ作成。 「その『履歴書』は曰(いわ)く付き」2015年6月17日より

 グラフのTの時点は、対象企業が「私の履歴書」に登場した年で、グラフが表すのはその企業のROEと東証一部の平均ROEとの差だ。過去10年「私の履歴書」の登場企業は平均すると、登場する当該年には東証一部平均よりも2%近くROEが高い。そして、T−1は前年、T−2は前々年、T+1は登場の翌年、T+2は翌々年の、それぞれ当該企業のROEが東証一部の平均ROEに対してどのような関係にあったかを表している。