堅調な企業業績に、2万円台を突破した株価――。アベノミクス以降、日本の景気は回復基調にあると言われる。しかし、真の意味で経済は回復しているのだろうか。世界のGDPにおける日本の比率や1人当たりGDPは、今も低水準に留まっているのだ。第一生命経済研究所 経済調査部の永濱利廣・主席エコノミストは、こうした日本経済の地盤沈下の裏には構造的ないくつもの要因があり、もはや日本企業が好調だからと言って、経済も好調とは限らないという現実に対して警鐘を鳴らす。日本経済は、今後も地盤沈下を続けるのだろうか。
日本のGDPは盛り返したものの……
国際比較で見た地盤沈下の現実
GDPは、一国の経済活動を観察する上で最も総合的な経済指標である。GDPは国の経済規模を示したもので、国内でどれだけの財やサービスが生み出されたかを示す。このため、経済活動が活発になればGDPは拡大し、逆に後退すればGDPは縮小する。このことから、景気判断の際にも重要な経済指標の1つとなる。
日本のGDPは内閣府が公式に推計・公表しており、2007年度には名目GDPで513兆円に達した。しかし、その後はリーマンショックや東日本大震災により、2009年度と2011年度には471兆円と、1991年の水準まで落ち込んだ。2014年度にはそこから若干盛り返して490兆円となったものの、依然としてピークの1997年度から▲6%も低い水準に留まっている。
国際比較をすると、地盤沈下はさらに深刻だ。世界のGDPに占める日本の比率を見ると、1994年時点では17.8%であったが、長期の景気低迷や中国をはじめとする巨大な新興国の台頭、さらには円安などの影響により、14年時点で6.1%にまで縮小している。
なお、国民の豊かさを示すとされる1人当たりGDPで見れば、日本は2013年時点で3万8468ドルとなり、依然として中国の約5.5倍の水準にある。しかし、その1人当たりGDPで見ても、日本は2000年の先進国中第3位の水準から、2013年には同20位まで低下している。